記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、運動神経に問題が起こり、筋肉が使えなくなってしまう病気です。難病にも指定されているこの病気は、どんな病気でどんな治療があるのでしょうか。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の基礎知識をご紹介していきます。
自分の意思で、あるいは意思が関係なくても必要に応じて体を動かすことができるのは、脳や末端神経からの指令が筋肉に伝わっているためです。そしてそこで大きな役割を果たしているのが、運動神経細胞です。
筋萎縮性側索硬化症は、この運動神経細胞が侵されてしまうことで発症する病気です。筋肉を動かすことに支障が出てくるため、筋萎縮性側索硬化症になるとあらゆる活動に支障が出てくるようになります。そして次第に筋肉が痩せ衰えていくため姿勢を保つことも難しくなり、呼吸をするにも筋肉が衰えることで最終的には自力での呼吸が難しくなります。ただし感覚や知能、排泄に関しての支障が発生しにくいとされています。
筋萎縮性側索硬化症のタイプとして、まず挙げられるのが四肢型です。これは手や足に力が入りにくくなることが初期症状として出やすいタイプです。物がうまくつかめなくなったり、歩こうとして足を動かそうとすると、足が前に出ないと言った症状が現れます。
そしてもうひとつは球麻痺型です。延髄に支障が発生することが原因で発症し、舌や口などが動かしにくくなるなどの初期症状が現れます。話す際にろれつが回らなかったり、言葉の型をなすのが難しいとか、食べ物や唾液を飲み込みにくいなどが代表的な症状として挙げられます。
筋萎縮性側索硬化症は現状では、はっきりとした原因がわかっていない病気です。ただしこれが原因ではないか、という推測はいくつか出されています。
ひとつは、活性酸素に対抗するための酵素が突然変異を起こし、自身の細胞や神経を傷つけるということです。これは特に、遺伝が関係しているのではないか、とも言われています。
それから神経伝達物質であるグルタミン酸などの関係性も指摘されています。筋萎縮性側索硬化症の人は、グルタミン酸を取り込む力が弱いために神経細胞の外にグルタミン酸などが溢れてしまい、神経細胞にダメージが出てくるのではないかと考えられていますが、さらなる研究が必要になっています。
また傷ついた神経細胞を回復させるための栄養が不足していることも、原因のひとつだと考えられています。
筋萎縮性側索硬化症の治療の中心は薬物療法です。
薬物療法においては、グルタミン酸の毒性を抑制することで症状の進行を遅らせます。ただし、あくまで症状の進行を遅らせるのが目的であり、完治させる作用を持った薬は存在していません。
また、運動療法も重要です。筋肉を動かすことが困難になっていくからといって、まったく動かさないままだと筋肉の劣化スピードはますます速くなっていきます。また筋肉が硬くこわばってしまったり、関節が拘縮してしまうと言った症状も出やすくなります。そのためできる範囲で筋肉を動かすために運動療法や、リハビリ療法も取り入れる必要があるのです。
筋萎縮性側索硬化症は原因もはっきりとわかっておらず、完治させる治療法も確立されていないのが現状です。ただし、症状を遅らせるための治療はあるため、周囲のサポートのもと医師の指示に従った適切な治療を続けていきましょう。