ウィルソン病の発症原因は遺伝って本当?!

2017/11/10

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ウィルソン病は、銅が体内に蓄積することで様々な症状が発症する難病です。遺伝が関わっていて、薬で症状を抑えられるといわれていますが、それは本当でしょうか?この記事ではウィルソン病の原因や治療について解説しています。

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ウィルソン病はどんな病気なの?

ウィルソン病は、いわゆる難病とされているものの一つで、銅が体内に蓄積することによって生じる病気です。その病名は、この病気を1912年に初めて報告した博士の名前に由来しています。銅は必須微量元素の一つとされており、酵素の構成に使用されるなど、人体にとって必要な金属の一つです。
食物の中に含まれる銅は小腸から体内へと取り込まれ、本来であれば肝臓でセルロプラスミンというたんぱく質と結合し、血液を通して体内を巡ります。そして必要とされる量を超える銅は、肝臓から胆汁を通して体外へと排出されます。

しかしウィルソン病の患者は、肝臓での銅の代謝が正常に行われないため肝臓に銅が蓄積し、さらに血液を通して脳、腎臓、眼などにも蓄積してしまいます。症状が最初に現れやすいのは肝臓で、3歳から15歳の小児期に疲れやすくなったり、目や皮膚の色が黄色くなったりする黄疸をきっかけにウィルソン病が発見されることが多いです。また震えや言語障害などの脳の症状、血尿や結石などの腎臓の症状なども現れます。

何が原因で発症するの?

ウィルソン病は遺伝により発症するもので、日本においては出生する3万から4万人に1人の割合で生じるとされています。その原因はATP7Bという遺伝子に異常が生じることです。

人間が持つ46本の染色体のうち44本は常染色体、残りの2本は性染色体ですが、このATP7Bという遺伝子は常染色体の中に位置しており、銅を輸送するタンパク質の生成に関係しています。その遺伝子に異常が生じると、体内での銅の輸送が正常に行われなくなり、肝臓や脳などに銅が蓄積して行ってしまい色々な症状を引き起こします。

また、ウィルソン病は、潜性遺伝による病気です。両親が共にその染色体異常を有している場合でも必ずその子供が発症するというわけではなく、四分の一の確率で発症することとなります。そのため、兄弟の中にウィルソン病の患者が出れば、その他の子供も発症する可能性が理論上は四分の一あるということなので、兄弟にウィルソン病がいる人は早めに検査を受けるようにしましょう。

ウィルソン病の経過と注意点について

ウィルソン病は難病の一つとされてはいるのですが、酢酸亜鉛、トリエンチン、ペニシラミンといった、治療効果か認められている飲み薬があるため、治療や予防が可能な比較的珍しい難病だといわれています。
医師の指導のもときちんと薬を服用していれば、肝機能障害などの症状は改善して行くことが期待できます。そのためこのウィルソン病だと診断された人でも、治療を受けることにより進学や就職、結婚などといった、通常の日常生活や社会生活を送ることができるようになるケースは多いので、発症したからと言って不必要に恐れる必要はないと言えるでしょう。

ただし、症状が無くなるとどうしても油断が生じ、薬を飲み忘れてしまいやすくなります。それが続くとまた以前と同じような症状が出るだけではなく、場合によっては死に至るような重篤な症状を招いてしまう恐れもあるので、薬の飲み忘れがないように注意しましょう。

おわりに:薬の飲み忘れに気をつけ、医師の指示通り治療を続けよう

ウィルソン病は難病ではありますが、適切な治療で症状が抑えられる、比較的コントロールしやすい病気です。医師の指示に従い服薬を続ければ、通常の人と変わらない生活を送ることができます。ただし、薬の飲み忘れが続くと症状がひどく悪化することもあるので、薬の飲み忘れには注意してください。

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