記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心の病の一つである強迫性障害は、どのような人でも突然かかる可能性がある病気です。具体的な症状や治療法について、以下で解説していきます。
強迫性障害とは、ほんの些細なことであると自分では理解していながらも、その些細なことが頭から離れない、大丈夫だと分っていながらも同じ確認を繰り返してしまう、などの症状が現れる病気です。同じ動作や確認を繰り返して行うことで物事がなかなか前に進まず、日々の生活にも支障が現れます。
強迫性障害には、「強迫観念」と「強迫行為」の二つの症状があります。
強迫観念とは、ある出来事や考えが頭の中から離れない症状です。例えば、自分が起こしていないとは分かっているのに、何か人を傷つけていないかどうかが不安になり、テレビや新聞に自分が出ていないかどうかを確認したり、時には警察にも赴いて確認したりします。強迫観念を持つ人は不吉、儀式ということにもこだわりをもつ傾向にあり、不吉な数字に敏感になったり、儀式を行わないと不安に駆られたりします。
強迫行為の症状がある人は、あることを繰り返し行わないと気が済みません。強迫行為を行う人で多いのが、汚れや不潔に対する恐怖です。どこで細菌に感染するか分からないことに怖さを覚え、手を洗ったり服を着替えたり、その服を洗濯したりします。このような行為は一度では済むことがなく、何度も繰り返されます。また、物が置かれている場所にもこだわりがあり、例えば家の机に置くテレビのリモコンの位置でも、自分が置いた場所から1mmでもずれていると不安になります。
強迫性障害の人が繰り返す行為や、確認をしないことによる不安感は、日常的なものがほとんどです。そのため、自分が強迫性障害なのかどうかを判断するのは難しい場合があります。ただ、まずは自分が繰り返し行う行為によって、周りの人を困惑させていないかどうかを確認してみるのがいい判断材料です。
また、重度の強迫性障害は普段の生活に影響をきたします。人によっては、同居している家族に何度も手を洗うよう要求する、ある場所に触るのを禁じることがあり、要求が増えると、家族や周囲の人を心の病にさせるリスクも考えられます。度が過ぎる確認や行為をしていると思ったら、まず周りの人に聞いてみて、その上で医療機関に相談してみることが良いでしょう。
強迫性障害は、適切な治療によって回復が期待できます。主な治療法は、「薬物療法」と「認知行動療法」の二つです。
強迫性障害を持つ患者さんは、うつ病を併発している場合や、うつではなくても強い不安症状があります。その症状を和らげるには、抗うつ薬を服用または投与するのが一般的です。
抗うつ薬は、脳内の「セロトニン」系細胞にのみ作用する新型の薬です。強迫症状は、脳の中にあるセロトニンという神経に異常があったために起こると考えられているため、セロトニンに作用する抗うつ薬を投与して状態を落ち着かせます。抗うつ薬はうつ病患者さんに比べ服用する量が多く、また期間も長いです。
抗うつ薬で一旦状態が落ち着いたら、認知行動療法を行って回復を目指します。認知行動療法とは、心理学が基になっている治療です。強迫行為や観念の基になっている不安材料を取り除くのですが、その不安をさらけ出し立ち向かいます。具体的には、手洗いを繰り返していたことを止める、カギをかけたかどうかを確認しないで我慢するなどです。
行動療法を始めてしばらく患者さんは不安が続きますが、我慢を繰り返していくことで徐々に解消されていきます。認知行動療法は強迫性障害のことをよく理解している医師のもとで行うことで、回復の期待ができます。
日常的に行っている動作の延長線上にある強迫性障害は、誰しもかかる可能性があります。ある動作を繰り返し行わないと気が済まない、そのことで周囲が困っていると感じたら、一度医師に相談してみましょう。