記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6 記事改定日: 2018/3/26
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日本人には腰痛持ちの方が非常に多いと言われていますが、この腰痛の原因とは一体何なのでしょうか。意外に知られていない腰痛の原因などを幅広くご紹介していきます。
腰は、腰椎と呼ばれる5つの骨がブロック状に積み重なって構成されています。腰痛は、この腰椎や腰の筋肉に負担がかかったりすることで引き起こされるものです。
腰痛持ちの方は非常に多いですが、実は腰痛のうちおよそ85%は、骨などの組織には異常は見られず、レントゲン検査で原因が特定できるものではありません。ただ、主に生活習慣などが発症に関連していると考えられています。具体的には、悪い姿勢を続けていることや、同じ姿勢を続けていること、過度の運動や突然重いものを持つといった動作などです。また、不眠やストレスも腰痛を引き起こす原因と考えられています。
先述の通り、腰痛のおよそ85%は原因が特定できないものですが、残りの15%程度は特定の病気や骨折などの外傷が原因とされます。
その代表的な病気というのは、変形性脊椎症や椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの、腰椎そのものに異常が生じる病気です。
一方、腰椎を直接阻害するのではなく、臓器の周囲にある神経を刺激して発生する腰痛もあります。具体的には、変形性股関節症などの整形外科系の病気、胆嚢炎や胃潰瘍など消化器系の病気、尿路結石など泌尿器系の病気、子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科系の病気、解離性大動脈瘤といった循環器系の病気などが挙げられます。
大腸がんの症状といえば、血便や下血、腹痛などが知られていますが、腰痛も出ることがあります。この腰痛は、便の通過に伴って腫瘍が圧迫されることで起こりますが、ただの腰痛として見逃してしまう方も少なくありません。
見分ける方法は、「姿勢に関わらず痛みが持続するか」という点です。ヘルニアや外傷による一般的な腰痛では、荷物を持ち上げたときなど体を動かす際に痛みが生じ、また姿勢によっても痛みの程度は変わります。しかし、横になっていても立っていても同じくらい痛みが続く場合は、内臓が原因の腰痛の可能性が高いのです。
実は、便秘が原因で腰痛が引き起こされることがあります。便秘が数日続くと、腸内の便からガスが発生しますが、このガスが溜まると血管を圧迫し、腰回りの筋肉を緊張させ、腰痛を起こすことがあるのです。また、ガスの一部が腸壁に侵入して血液内に入ると、血液の質が悪化し血流が悪くなり、筋肉の疲労感や鈍痛を引き起こします。この血流の悪化は、血管が密集している腰付近で起きやすいために、腰痛が引き起こされるとも考えられています。
腰痛には急性腰痛と慢性腰痛があります。急激に腰に痛みがあらわれる急性腰痛(ぎっくり腰)は、前かがみの姿勢で重い物を持ち上げたときや、腰をひねったりしてベッドから立ち上がる、前かがみで靴を履くなど、腰に負担のかかる姿勢をとったときに起こることが多いです。通常は1週間ほどで自然によくなりますが、他の病気が関係している腰痛でないかを医療機関で確認することをおすすめします。
一方、慢性腰痛は、いつ痛みが始まったかはっきりを特定できないことが多いようです。痛み自体はそれほどひどくなく、鈍く重苦しい痛みであったり、ズキズキと体の奥に響くような痛みである場合が多いことが特徴で、肩の凝りや不快感を感じることもよくあります。
上述したとおり、腰痛の原因は多様なので、腰痛が生じた場合は整形外科を受診し、命にかかわる病気がないことを確認することがまず大切です。医療機関では問診や診察、X線検査やMRIといった画像検査を行い、腰椎や周囲の組織に異常がないかを調べ、原因に合った治療を行っていきます。原因がはっきりしない場合は、心理・社会的要因や神経障害性疼痛の可能性も考慮し、治療法が選択されるでしょう。
腰痛症の治療の基本は保存療法です。薬物療法としては、非ステロイド性抗炎症薬の他、筋弛緩剤、抗不安薬などが投与されます。その他、神経ブロック療法、リハビリテーション、認知行動療法などが行われることもあります。
腰痛で日常生活が制限されると体力が低下し腰を支える筋力が衰え、精神的な疲弊も強くなることで、さらに腰痛がおきやすくなります。悪循環を断ち切るためには、中腰にならないなど日常的姿勢に注意し、また腰の支持性を高めるための運動や体操を取り入れるようにしましょう。個々の体操や運動プログラムについては、整形外科で相談することをおすすめします。
安静にしていても腰痛が軽くならない、次第に悪化する、発熱を伴う、下肢がしびれたり力が入らない、尿漏れがするなどの症状が現れた場合は、重篤な病気が原因の可能性があるため、放置したり自分で管理することは禁物です。すみやかに整形外科を受診するようにしましょう。
また、腰痛を予防するために運動を取り入れることは効果的ですが、自己判断ですることは症状悪化につながる場合もあります。腰痛の原因を特定してもらい、原因にあった運動メニューを作ってもらうようにしましょう。