記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/15
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
顎の形が変形しているだけでなく、変形のために食事がとりにくくなってしまう恐れもある「顎変形症」。今回の記事では顎変形症について、全般的な知識をお届けしていきます。
顎変形症は、上顎と下顎、或いはその両方に大きさや形、位置等の異常が起きてしまい、噛み合わせの異常や顔面の変形が起きてしまっている状態の事です。
顎変形症の発症には遺伝的な要因もあるとされていますが、多くは原因不明のため、予防策を講じにくい点では厄介な症状といえます。ただ顎変形症は、日本人では比較的下顎に問題が生じる場合が多く、欧米人は上顎に問題が生じ易いという傾向が存在しています。そのため、幼少期の癖も原因のひとつではないか、との考えもあります。特におしゃぶりを常用した場合に、なり易い傾向があるという見方も現在ではされています。また他にも顎骨に外傷を負ってしまった際等に、後遺症として顎変形症が生じてしまう人も少なくありません。
まず、顎変形症にはさまざまな種類があります。まず、上顎が外側に出てしまっているタイプは、上顎前突症と呼ばれており、逆に上顎が内側に引っ込んでしまっている場合は、上顎後退症と呼ばれています。同様に下顎が外側に出過ぎている場合は下顎前突症と呼ばれ、下顎が内側に引っ込んでしまっている場合は下顎後退症と呼ばれます。
そして、顎変形症になった際の具体的な症状の現れ方ですが、受け口や出っ歯になるので、噛み合わせに問題が生じる事が多くなります。他にも関節の痛みや口が開かないといった顎関節症の症状も見られる上に、症状が進行すると顔面自体に歪みが生じるので、注意が必要です。
顎変形症は、症状が軽度か重度かによって、行うべき治療法に違いが生じます。
まずは噛み合わせが幾分悪い等、顎変形症の症状が比較的軽い場合は、外科的な手術は行わず歯列矯正だけで対処可能です。そのため、症状が軽い段階で対処が出来れば、外科手術による負担を回避する事も期待出来ます。
ただし、顔面に不自然な歪みが生じる等、顎変形症の症状が重い場合は対処法も厄介です。その場合、基本的に手術前にまず歯列矯正をする事になります。なお、歯並びによっては、手術前の矯正に1年以上掛かる事もあるので、治療が長期化する可能性があります。
そしてその後の外科手術ですが、上顎や下顎の骨を切り、望ましい位置に移動してそこで固定するという、骨切り術を実施するケースが多いです。基本的に全ての処置を口腔内で行うため、顔に傷が残る心配はほとんどありません。
顎変形症は、軽度であれば歯列矯正だけで治療可能な場合もありますが、症状が進行し顔が変形してしまった場合は手術が必要になってしまいます。気になる症状が現れたら、まずは歯科を受診し、なるべく早期治療を心がけましょう。