記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/11/20
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
近視と並ぶ一般的な目のトラブルが「遠視」です。ただ、遠視になるとどういう見え方になるのでしょうか?「遠視は遠くが見えて近くが見えにくい症状」とも言われますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?
普段、目に見えた光は、角膜に続いて水晶体(カメラでいうとレンズの役割にあたる働きをしています)を通り、眼球の奥にある網膜(カメラでいうとフィルムの役割を果たしています)に達します。このとき、水晶体は厚みを変化させて網膜にピントがあうように調節していますが、この網膜の後方にピントがあってしまうタイプの屈折異常が起きることがあります。これが遠視の状態です。
遠視になっても特に遠くが見えにくいわけではありません。ただ、ピント調節の位置が後方にある関係で、距離にかかわらずものがぼやけてみえるのが特徴です。正視と同様、初期は視力も正常であり、症状が現れないまま経過していく場合も多く、そのまま強度になっていくことも多々あります。
重度の遠視になると、近くを見るためにはかなりのピント調節をしなくてはならないため、内斜視になったり、絶えず目の調節が必要なために目や身体の疲労感が目立つようになってきます。また集中力が弱まったり、仕事効率が悪くなったりすることもあります。首や肩こりがひどくなったり、頭痛が起こることもあります。
このため、見え方が悪くなくても、目の疲れやその他の症状が出てくるようになったら眼科で検査をうけてみるのも一つの選択肢です。
遠視は子供に多い症状ですが、それは目の発達機能によるもので、たいてい成長とともに改善されていきます。しかし放置しておくと目の発達が止まって弱視になる危険性もあるので、3歳児検診で見え方に問題があれば、眼科での検査が勧められます。また物を見るのに自然と調節が必要になり、その結果として目の疲れが生じて集中力の低下、学習障害につながってくることもあります。
遠視には、凸レンズによる矯正が有効です。凸レンズで光を集め屈折力を上げることで、網膜の後ろであっていたピントを矯正するのに役立ちます。特に子供の遠視にはメガネによる矯正が大切で、網膜にピントのあった光を十分に取り込んで視力の成長を助ける必要があります。なお、矯正効果を上げるためには、メガネを着用して、本や漫画など興味のあるものをたくさん見ることが重要です。
なお、眼科において遠視の検査をする場合は、調整麻酔の点眼薬を使用して光の屈折の検査をすれば判明します。
勘違いしている方が非常に多いのですが、遠視とは距離にかかわらずものがぼやけてみえる症状が特徴です。放置すると目の疲労感や斜視につながることもあるので、早めの矯正をおすすめします。