急性中耳炎の治療方法と治療期間について

2017/11/16 記事改定日: 2019/1/22
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

急性中耳炎は、急に中耳に炎症が起こり耳の痛みや耳閉感などの症状が現れる病気です。風邪などをきっかけに発症しますが、急性中耳炎を治療するには、どんな方法がありどのくらいの期間がかかるのでしょうか。
難聴になってしまったケースの治療方法とあわせて解説していきます。

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急性中耳炎発症のメカニズム

中耳に急な炎症が起きて膿がたまってしまう病気を急性中耳炎といいます。中耳炎の中でも、48時間以内に起こった中耳炎が急性中耳炎とみなされ、3歳以下の子供の80%ほどが発症するといわれています。

鼻の奥に通じている耳管はつねに開閉を繰り返している状態で、この耳管から細菌やウイルスが入ってくることによって中耳の粘膜に炎症が起こることが急性中耳炎の原因です。ウイルス感染のあとに細菌が二次感染することもあります。

原因菌としてはインフルエンザ菌や肺炎球菌が多いといわれていますが、年齢によって二次感染の原因となる細菌は違う傾向がみられ、新生児は大腸菌や黄色ブドウ球菌が多く、幼児は肺炎球菌、溶連菌、成人してからは肺炎球菌、モラクセラ・カタラーリスなどが原因菌になることが多いといわれています。

急性中耳炎の治療方法

大人の場合には、経過観察で治癒することが多いため、3日間は抗生物質を処方せず様子をみることになるでしょう。症状によっては対症療法として解熱剤や鎮痛剤が処方されることがあります。

子供に関しては、早めに抗生物質を使用するケースが多いです。症状を緩和するための薬も必要に応じて処方されます。ただし、抗生物質に関しては耐性菌が増加傾向にあるので慎重になっている医師も多いといわれています。

発熱や痛みの症状がひどい場合は鼓膜を2mm~3mmほど切開して膿を排出する処置を行います。切開した傷は2日~3日程度で自然にふさがるので、縫合の必要はありません。

治療期間はどのくらい必要?

急性中耳炎は完治までには通常5日から長くて2週間程度の治療期間が必要です。途中で治療をやめてしまうと再発しやすくなってしまったり、慢性化する可能性があるので注意が必要です。

ただし、なかには1ヵ月以上治療が続いてしまうケースもあるようです。上記の期間はあくまでも目安であり、症状や状態によって治療時間は異なります。長く治療が続くと途中で止めてしまいたくなるかもしれませんが、必ず医師から完治と認めてもらうまで治療を続けましょう。

急性中耳炎で難聴になることはあるの?

急性中耳炎が悪化すると耳が聞こえにくくなることもあります。
急性中耳炎になると中耳に膿などの分泌物が溜まることがありますが、このような状態に陥ると内部から鼓膜を圧迫して鼓膜の動きが悪くなることがあります。
その結果、音が伝わりにくくなって音が聞こえにくくなったり、音が耳の内部に籠るような症状が見られることもあるのです。

また、さらに症状が悪化すると中耳に浸出液がたまる「滲出性中耳炎」や、さらに奥の内耳に炎症が波及して「内耳炎」を発症することがあり、難聴の原因となりえます。

急性中耳炎から難聴が見られるようになった場合は、適切な抗生物質の服用を続けて炎症を鎮静化させるのはもちろんのこと、鼓膜の内側に膿や浸出液が溜まっている場合には鼓膜を切開したり、鼓膜にチューブを留置して排出を促す治療が行われることもあります。

おわりに:急性中耳炎は完治するまで治療を続けることが重要

急性中耳炎は通常5日から2週間程度の治療が必要です。症状や状態によってはさらに治療が長引いてしまうこともありますが、治療を途中で止めてしまうと再発しやすくなったり慢性化してしまう可能性があります。必ず完治するまで治療を続けるようにしましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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