記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胸膜炎は胸や背中の痛みや発熱などの症状が起こる病気で、ひどいときには呼吸困難に陥ることもある病気です。また、深刻な病気が原因になっていることもあります。この記事では胸膜炎の基礎知識を紹介しています。
肺の周りには胸膜が2枚あります。ひとつは肺の表面の周りにある臓側胸膜、もうひとつは胸壁、横隔膜、縦隔をおおっている壁側胸膜です。胸膜は、肺が膨らんだりしぼんだりするときの潤滑剤としての役割と、肺を様々な衝撃から守る働きがあります。
この2枚の胸膜の間にある空間を胸腔といい、通常は胸腔にある胸水は少量ですが、胸膜の炎症による浸出液で胸水が通常よりも増えた状態になることを胸膜炎といいます。炎症が起こる原因は様々なものがありますが、感染症や悪性腫瘍によるものが多くを占めています。また、膠原病が原因になることもあります。
胸膜に炎症が起こると痛みや発熱などの症状が現れます。痛みの部位は胸部のこともあれば、背中側に痛みを感じることもあります。胸部や背部の痛みは、咳や深呼吸をするときなどに増強するということもあります。
胸腔に胸水が溜まることで肺を圧迫して、肺の動きが制限されることもあります。こうなると、肺がいつもと同じように膨らむことが難しくなり呼吸がしづらくなっていき、ひどくなると呼吸困難を起こすこともあります。
胸膜炎を引き起こす原因のひとつは、他の臓器で起こった感染症が胸膜にまで広がることです。
肺炎など、肺で起こった炎症が進行し胸膜にまで広がることで胸膜炎を併発してしまいます。
また、がんなどの悪性腫瘍も胸膜炎の原因です。特に肺癌は位置的にも近く、癌細胞が大きくなってくると、肺を越えて胸膜にまで達してしまうことも少なくありません。また、周囲のがんが直接胸膜に拡大しなくても、血液を介してがん細胞が胸膜に達することもあります。
また、膠原病の場合は、免疫が自分の身体を攻撃してしまうことで胸膜に炎症が起こり胸膜炎を発症します。
胸膜炎の症状は他の病気の症状とも似ており、症状だけをみて胸膜炎だと診断することは難しいです。
胸水の貯留はX線(レントゲン)検査で見ることができますが、X線(レントゲン)検査の画像では判断できないくらい胸水の量が少ないときは、CT検査が行われます。
胸膜炎の場合には片側だけに胸水が溜まっていることが多いですが、心臓や肝臓の病気で胸水が溜まるときは、両側に胸水が溜まる特徴があるため、胸水が溜まっている場所が診断のポイントになることもあります。また、その他、胸腔穿刺を行い、胸水を直接採取して胸水を調べることで、何が原因となって胸膜炎を起こしているのかを調べることもあります。
胸膜炎は発熱など風邪のような症状が起こりますが、ひどくなると呼吸困難になることもあります。感染症やがん、膠原病などの病気が原因で起こるため、発見が遅れると治療が困難になることがあるので注意が必要です。疑わしい症状があるときは必ず病院で検査してもらいましょう。