先天性横隔膜ヘルニアとは ~ 出産前後のケアが大切 ~

2017/11/10

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

先天性横隔膜ヘルニアとは、生まれつき横隔膜に穴があいていて、そこから胃や腸などの内臓が胸腔に飛び出し肺を圧迫してします病気です。この記事では先天性横隔膜ヘルニアの治療や症状などの基礎知識を紹介しています。

先天性横隔膜ヘルニアとは

先天性横隔膜ヘルニアとは、体内でお腹と胸を境界にある横隔膜という薄い筋肉の膜に生まれつき穴が開いている状態で、この穴から腹腔内の臓器が胸腔内に脱出してしまう疾患です。腹腔内から胸腔内へ脱出する臓器は、小腸、結腸、肝臓、胃、十二指腸、脾臓、膵臓、腎臓などがあります。

診断は出生前の超音波検査で発見されることが多く、胎児の胸部に本来腹腔内にある腸などの臓器が見られることで診断されます。臓器が胸腔内に入りこむことで肺が圧迫され肺の低形成を起こし、その程度の重さにより出生後の赤ちゃんの状態が変わるため、妊娠中からMRIや染色体検査を行い詳しく病状を調べます。

先天性横隔膜ヘルニアの原因

通常、私たち人間は妊娠8~10週頃に横隔膜が形成されるのですが、その過程で横隔膜に裂孔ができると考えられています。

先天性横隔膜ヘルニアの原因は未だはっきりと解明されてはいませんが、レチノイン酸合成経路の障害によって横隔膜の形成段階で形成不全を起こし裂孔が生じるのではないかという説があるものの、完全に立証されたわけではありません。

また、それ以外にも病因遺伝子が関係しているのではないかという説もあります。
先天性横隔膜ヘルニアはそれ単独で起きる場合もありますが、染色体異常との合併率が30%、先天性心疾患との合併率は40%というデータがあり、その他の疾患や症候群、構造以上との合併を起こしている例も多く見られており、まだ解明されていない部分が多い疾患です。

先天性横隔膜ヘルニアの症状

先天性横隔膜ヘルニアはその病状により出生時に死亡してしまう重症例から、新生児期に全く症状が出ない軽症例までその症状のあらわれ方の差が大きい疾患です。

重症の場合は、腹腔内の臓器で肺が圧迫され起こる肺の低形成と、それにより生じる新生児遷延性肺高血圧の症状が現れます。

呼吸不全や循環不全、チアノーゼ、余脈、無呼吸といった症状が現れ、蘇生処置を必要とすることもしばしばあります。出生後に蘇生処置を必要としない場合でも、90%の赤ちゃんは生後24時間以内に呼吸困難症状が現れるため、出生前から赤ちゃんの状態を把握し、適切な分娩場所や時期を定め、出生後は速やかに治療を開始できる環境を整えておくことが大切です。

先天性横隔膜ヘルニアの治療法

赤ちゃんは母親の胎内では胎盤によって酸素が供給されていますが、出生後は肺の低形成のため自発呼吸では酸素供給が十分ではないケースが多く、出生直後から人工呼吸での厳重な呼吸管理が行われます。

赤ちゃんの状態が安定していれば手術を行い横隔膜を修復します。
胸腔内に移動している内臓を腹腔内へ戻し横隔膜を修復しますが、横隔膜の欠損部分が小さければ直接縫合閉鎖を行います。横隔膜の欠損部分が大きければ人口布を用いてパッチ閉鎖を行います。しかし、手術をして横隔膜を修復しても肺の大きさがすぐに戻るわけではないので引き続き厳重な呼吸管理が必要です。

おわりに:先天性横隔膜ヘルニアは長期のケアが必要。医療チーム一丸になってフォローしよう

先天性横隔膜ヘルニアは出生前に超音波検査などで発見されることの多い疾患なので、早くから準備をしておくことが大切です。治療後も症状によっては長期的なケアが必要になることがあります。医療チームと協力しながら、赤ちゃんのフォローをしていきましょう。

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