記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ニューモシスチス肺炎とは、かつてカリニ肺炎とよばれていた肺炎で、エイズなどが原因で免疫が著しく低下することで発症します。この記事ではニューモシスチス肺炎について詳しく解説しています。
ニューモシスチス肺炎とはニューモシスシス・イロベチイを原因とする肺炎です。以前は原因微生物がニューモシスチス・カリニと考えられていたことからカリニ肺炎と呼ばれていました。現在はニューモシスチス肺炎と呼んでいます。
ニューモシスチス・イロベチイには、多くの人が幼少期に感染しており、感染していても症状が出現しない不顕性感染です。この真菌がどこに潜んでいて、どのような経路で感染していくかは判明されていません。
ニューモシスチス肺炎は日和見感染です。これは免疫が著しく低下すると感染した症状を呈する病気であり、エイズを発症している人や抗がん剤治療を行っている人、臓器移植や膠原病などで長期にステロイドを使用している人などがなりやすいと考えられています。
ニューモシスチス肺炎の主な症状として、発熱、痰を伴わない乾性の咳、全身倦怠感等が挙げられます。進行すると肺から酸素を取り込みにくくなるために呼吸困難が出てきます。チアノーゼが出現することもあります。
エイズ感染者に発症した場合は他の免疫不全患者に感染した場合よりも症状も比較的軽く、予後もよいことが知られています。
とはいえ、ニューモシスチス肺炎は肺炎の中でも重篤な肺炎であり、発症した場合は非常に高い死亡率を持つ疾患でもあります。
胸部X線(レントゲン)で両肺の全体がすりガラスのように白くなっていることが認められ、CT撮影を行うと嚢胞と呼ばれる空気の嚢が認められます。確定診断は気管支洗浄液を特殊な染色をして病原体の確認を行いますが、これは気管支の目的とする場所にカメラをいれ生理食塩水を注入、回収した液を染色するという方法で行います。
ニューモシスチス肺炎の治療は点滴や内服による薬物療法です。
第一選択肢はST合剤を使用します。これは静菌的抗菌薬であるサルファメソキサゾールと合成抗菌薬であるトリメトプリムの合剤です。また進行したものにはステロイドを使用します。ST合剤を投与して7日から14日程度で高い頻度で薬剤性の発熱を認めますが、症状の悪化や他の感染症と区別することが重要になってきます。
発症すると重篤な状態になる危険性があるので早めの対応が必要であり、場合によっては確定診断を待たずに治療を開始することもあります。症状が出現しても免疫低下の原因となるものが判明できない場合はエイズの検査も併せて行い原因を探ることもありまあす。
ニューモシスチス肺炎は日和見感染であり、発熱や乾性の咳が続くといっても免疫力の低下もなく日常が成り立っている人には症状がでることはほとんどありませんが、エイズなどの深刻な病気が隠れている可能性があるため、油断は禁物です。気になる症状がある場合は必ず医師に相談しましょう。