記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胸腺から出る癌の一種、「胸線腫」。今回はこの胸線腫について、症状や検査法、治療法などの全般的な情報をお伝えしていきます。
胸部の中央の腹側・肋骨の裏側に胸線は存在します。胸線はTリンパ球という白血球が成熟する器官で、体液性免疫や抗体の産出に関わっています。そして胸線腫とはこの部分に発生したしこりで、癌の一種です。
昔は胸線癌も胸線腫の一部として扱われていたものの、今は別の腫瘍として区別されています。胸腺癌は腫瘍細胞の増殖スピードがとても早く、別の部位にも転移します。一方、胸線腫は胸腺周囲で増殖するだけで、遠くに転移することはあまりなく、増殖スピードもゆっくりです。いずれも30歳以上、特に40代から70代の方に発症しやすいといわれている病気です。発症率に男女差はありません。
胸線腫は初期段階では無症状の場合が多く、患者さんのうち約半数は症状がまったく出ない状況で見つかると言われています。
しかし、咳や疼痛、呼吸困難といった症状が出てきていたら要注意です。すでに腫瘍が周りの臓器に侵食している恐れがあります。また、血液の流れを止めるような場所に腫瘍ができているときには、狭窄症状が起こります。その他にも、重症筋無力症や低ガンマグロブリン血症・多発筋炎といった症状が起こることもあります。
胸線腫の疑いがある場合は、胸部レントゲン検査や胸部CT検査・胸部MRI検査などにより胸線腫かどうかが特定されます。なお、胸線腫の手術や治療にはある程度の体力が必要なため、治療に耐えられるかどうかを見極めるために肺活量や心電図・採血検査が行われることもあります。
実は、胸線腫は患者数自体がとても少ない病気です。そのため治療法は確立しておらず、医師が自身の経験や患者の様子・腫瘍の広がり具合などを加味しながら、治療法を決定していくこととなります。
胸線腫の主な治療法は、手術や放射線治療による腫瘍の切除(あるいは機能できない状態にする)です。胸線腫はさまざまな部位に転移する病気ではないため、手術の場合には胸腺全体と周囲の脂肪を切除する方法が行なわれます。
ただし、もしも胸線腫が全身に広がっていたり、患者さん自身が放射線治療や手術に耐え切れる体ではなかったりする場合、抗がん剤による治療が選択されることもあります。
胸線腫は初期段階では無症状のことが多い反面、咳や疼痛などが現れた頃にはすでに症状が進行してしまっている恐ろしい病気です。違和感に気づいたら、早めに専門の医療機関で検査を受けるようにしましょう。