肺膿瘍(はいのうよう)は、何が原因で発症する?予防法はあるの?

2017/11/30 記事改定日: 2018/11/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

子供や高齢者は特に注意が必要な肺の疾患が、「肺膿瘍」です。今回の記事ではこの肺膿瘍について、発症原因や症状、予防法などをまとめてご紹介します。

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肺膿瘍(はいのうよう)とは

肺膿瘍は感染症の一種で、肺の炎症がきっかけで起こるものです。肺が原因菌に感染し炎症を起こすと、肺組織が破壊され、その部分には空洞ができます。するとその部分に膿がたまり、肺の機能に支障が出てくると言うのが肺膿瘍の主な概要です。

肺は呼吸する上で重要な役割を果たしている臓器ですから、肺膿瘍を起こすと呼吸機能にも悪影響が現れる恐れが出てきます。

肺膿瘍を発症する原因

肺膿瘍の原因である肺の炎症は、炎症を引き起こす異物が肺に侵入することで発生します。
肺に炎症を引き起こす異物は様々ですが、たとえばそのひとつに食べ物があります。通常、食事中に食べ物が誤って軌道に入ってしまった場合には、咳き込むことで肺への侵入を防ぐことができます。しかし咳き込む力が弱い子供や高齢者などは、そのまま食べ物が肺に侵入し、肺炎を発症する可能性も高くなります。

ほかの原因としては、口腔内の衛生状態の悪化が挙げられます。不衛生な口腔内では細菌は盛んに繁殖していき、その細菌を唾液と共に飲み込んでしまうと、細菌が肺に侵入し炎症を引き起こすことがあります。更に、肺以外に発生した病原菌が血液に混ざって肺に到達するというのも、肺膿瘍の原因のひとつです。

お酒と肺膿瘍の関係性

肺膿瘍は、大酒飲みやアルコール依存症などの人がお酒を飲んだまま寝てしまったり、頻回に嘔吐によって誤嚥を繰り返すことが原因のケースも少なくありません。

特に、アルコール依存症の人は、口腔内の衛生状態も悪化していることが多く、免疫力も低下しがちなため、誤嚥を繰り返すことで発症のリスクが高くなるのです。
お酒の飲みすぎと言えば、肝臓や膵臓へのダメージが大きいと考える人も多いと思いますが、肺にも思わぬダメージを与えることがあるので、過度な摂取は控え、適量を楽しむようにしましょう。

原因菌

肺膿瘍を引き起こす原因菌として最も多いのは、口腔内の嫌気性細菌です。口の中の細菌は唾液や食べ物と共に消化管に取り込まれますが、誤嚥を生じると肺内に侵入してしまうことがあり、それが発症の引き金となります。口腔内の細菌は衛生状態が悪化すると増加するため、口腔内が不衛生な人や誤嚥しやすい人は肺膿瘍を発症しやすくなるのです。

また、その他にもブドウ球菌や大腸菌、緑膿菌などが原因となることもあり、適切な治療を行うためにも、培養検査を行って原因菌の特定が行われることがあります。

肺膿瘍の症状

肺膿瘍の主な症状は、肺の炎症による咳や高熱です。ただし高齢者の場合、肺炎でも体温が平時と変わらないこともあります。ほかに、膿のような粘性の痰が出てきたり、慢性的な倦怠感、寝汗なども出やすくなります。

更に症状が進行すると胸痛が出てきますが、これは細菌感染が胸膜にまで進行していることを示すサインであり、要注意です。この頃になると顕著な体重減少や血痰、呼吸器症状などもみられるようになります。

肺膿瘍の治療法と予防法

肺膿瘍は、主に抗生物質の投与によって治療が行われます。ただし肺膿瘍を引き起こすくらいに炎症が進行しているわけですから、通常の肺炎よりもかなり長い期間、強力な抗生物質を投与することが必要です。抗生物質で完治しない場合は、炎症が起きていたり膿が溜まっている部分を外科手術で切除する必要も出てきます。

次に肺膿瘍の予防法ですが、これは肺の炎症を引き起こさないことが第一です。たとえば誤嚥に関しては食べ物を慌てて食べないようにする、高齢者や子供に対しては食事中の姿勢なども意識し、周囲が食事を見守ることが対策のひとつです。

それから口腔内を清潔に保つことも予防につながります。自分で口腔ケアを行うのが難しい高齢者や子供については、周りの人が歯磨きを手伝ったり、こまめに歯科健診に通ったりすることが大切です。

おわりに:肺膿瘍は、食べ物の誤嚥が原因で起こることが多い。日々の対処が重要。

食べ物の誤嚥によって起こることも少なくない肺膿瘍。咳や痰、発熱などの疑わしい症状が長引いていたら、すぐに病院で検査を受けることが大切です。
また、家族にお年寄りや子供、寝たきりの人、頻繁に酩酊状態になる人など、誤嚥しやすい人がいる場合は、日頃から誤嚥しないように周囲の人が気をつけてあげましょう。

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