陰茎癌(がん)の原因と治療で大切なこと

2017/12/4

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

陰茎癌は、男性の生殖器である陰茎(ペニス)に発生する癌です。非常に珍しい癌ではありますが、自覚症状が現れにくく恥ずかしさから病院への受診が遅れてしまう傾向があります。この記事では陰茎癌の原因と治療について解説しています。

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陰茎癌(がん)とは

陰茎癌は生殖器や排尿器を兼ねている陰茎(ペニス)に発生する癌です。主に包皮や亀頭に発生しますが、亀頭が最も多く、そのほか冠状溝にも発生することがあります。
陰茎癌は95%以上が皮膚の悪性腫瘍である扁平上皮癌です。皮膚は表皮・真皮・皮下組織という階層構造になっています。このうち表皮に存在する細胞にできるのが、扁平上皮癌です。発生率は人口10万人に対して0.2~0.4人と、非常にまれな癌です。初期にはほとんど症状がないことから、異常を感じにくく、たとえ異常を感じても、羞恥心などから発見が遅れる傾向があります。

陰茎癌の原因

陰茎癌の原因として考えられるものとしては、年齢、喫煙、包茎、外陰部の不衛生、梅毒などの性感染症、また、性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)などがあげられます。60~80歳の中高齢者に多く見られますが、特にリスクが高いのが包茎、喫煙とHPVです。包茎や喫煙があるとリスクが非常に高くなるほか、陰茎癌のおよそ3割から7割がHPVに感染していることがわかっています。

症状と検査方法

陰茎癌は、初期は陰茎部の皮膚から発生し、浅い潰瘍や皮膚の炎症等を現します。進行するとカリフラワー状の腫瘤や排尿困難などを起こします。痛みなどはあまりないのでわかりにくく、視診による診断が重要になります。
他の病気との鑑別診断をするために、視診で詳しく観察します。最終診断には、組織の一部を採取して顕微鏡で観察する生検検査が必要になります。CTやエコーなどの画像診断は進行度合いを調べるために有効です。

治療方法

陰茎癌の治療方法としては外科療法(手術)、放射線療法、化学療法などがあげられます。

外科療法(手術)

治療は外科手術が基本になります。病状により、病変部や周囲のリンパ節を切除する陰茎温存療法と、陰茎を切除する陰茎切断術に分けられます。陰茎切除後には排尿困難になるリスクがあるほか、排尿方法を変える必要が出てくることもあります。

放射線療法

初期の状態であれば、放射線療法の適応対象になります。また、転移後の痛みを緩和するために放射線療法を選択することもあります。放射線療法は陰茎の変形をある程度防げるというメリットはありますが、放射線治療による合併症や再発のリスクが高くなります。

化学療法

化学療法を選ぶ場合は適応条件が限られます。体力があり、全身状態が良い人、あるいは患者の強い希望などです。また、進行癌や転移性の癌が認められる場合、抗がん剤の多剤併用で治療することもあります。

おわりに:早期発見が治療には大切。少しでも違和感があるときはすぐに病院へ

陰茎部は生殖器であるために、人に見せることが心理的に負担になり、つい病院へ行くのをためらってしまいがちになってしまいます。しかし、進行すると治療成績が下がり、予後も非常に厳しくなります。治療には早期発見が大切です。少しでも違和感があるときには、すぐに病院を受診しましょう。

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