記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
尿路が細菌感染を起こすことで引き起こされる「尿路感染症」。尿路感染症になると、いったいどんな症状が現れるのでしょうか?また、どう治療していくのでしょうか?膀胱炎や腎盂腎炎など、尿路感染症の代表的な疾患の例を交えながらご紹介していきます。
腎臓には、体の中の不要な老廃物を尿として排出する役目があります。腎臓で作られた尿は、尿管、膀胱、尿道を通って外に排泄されるのですが、これらの尿の通り道を尿路といいます。尿路のうち、腎臓から尿管までは上部尿路、膀胱から尿道までは下部尿路と呼ばれます。
そして、これら尿路のどこかに細菌が侵入し、感染症を起こした状態が尿路感染症です。ほとんどの原因は細菌によるものですが、ウイルスや真菌、寄生虫などが原因になることもあります。前立腺や精巣上体は尿路ではありませんが、これらの部位に細菌が侵入した場合も尿路感染症と呼ばれることがあります。
膀胱から尿道までの下部尿路で炎症が起きると、トイレが近くなったり、排尿の前後に痛みを感じるようになります。下腹部の痛みや腰の下部に痛みを伴うこともあります。
下部尿路感染症のうち、細菌が尿道に侵入し、膀胱に炎症を起こした状態が膀胱炎です。膀胱炎は若い女性に多いのですが、これは女性の尿道から膀胱までの距離が短いことが関係しています。膀胱炎は人によっては繰り返すことがあります。
上部尿路感染症の特徴としては、症状が急激に現れる事があげられます。また、おしっこが近くなったり、排尿時に痛みを感じたりすることがあります。
また、腎臓から尿管までの上部尿路で起こる、最も代表的な尿路感染症が腎盂腎炎(じんうじんえん)です。腎盂腎炎とは、大腸にある細菌が尿道に侵入して尿路を逆流し、腎臓の腎盂(腎臓でつくられた尿が集まるところ)に達することで、片方もしくは両方の腎臓に炎症が起きる病気です。この病気にかかると熱が出ることが多く、寒気や背中の痛み、吐き気などを伴います。また尿が濁ったり、残尿感が起きる症状も見られます。20代から40代の女性に多く、慢性化すると腎機能が低下してしまうことがあります。また膀胱炎と同じように頻繁にトイレに行きたくなったり、排尿時に痛みを伴ったりすることがあります。
尿路感染症の治療は抗菌薬の投与が中心になります。
軽い膀胱炎の場合は水分を十分に摂ることで治ることもありますが、基本的に膀胱炎は抗菌薬の内服で治癒させることが多いです。ただし、投与された薬をしっかり最後まで飲み切ることが重要です。途中で薬の服用をやめてしまうと菌が復活し、膀胱炎が再発することがあります。治療中は水分を十分に摂ってトイレを我慢しないことが大切です。
腎盂腎炎の治療は安静と抗菌薬の投与が中心ですが、症状によっては点滴治療や入院が必要になることもあります。
なお、尿路感染症の治療に使われる抗菌薬は、ニューキロノン系剤やセフェム系剤が主になります。ニューキロノン系剤には、感染症の原因となる大腸菌を退治する強力な作用があります。また、セフェム系剤は、細菌の細胞壁を破壊して菌を殺す薬です。大腸菌だけでなく他の菌にも対応可能な上、副作用も少ないので、臨床ではよく使われている薬です。
尿路感染症は、感染した部位によって現れる症状も異なります。症状が落ち着いても、途中で治療を止めてしまうと再発したり、菌が強くなって治りにくくなったりしてしまうので、医師に指示された通りにしっかり最後まで治療を続けることが大切です。