記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/5 記事改定日: 2020/3/5
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
子供の発症率が高い股関節疾患のひとつに「ペルテス病」があります。今回の記事ではこのペルテス病について、発症の原因や症状、治療法など全般的な情報をお伝えしていきます。
ペルテス病は大腿骨骨頭が一時的に壊死してしまう病気です。
大腿骨は、長く太い棒のような形状をしている太ももの骨です。股関節から膝の間を構成している骨でもあり、また人間の体の中でも最も長く体積があり、かつ強靭な骨である、人間の下半身に関わる動きに深く関係しています。
そして、大腿骨骨頭は大腿骨の先端に該当する部分のことです。ペルテス病は大腿骨頭が壊死してしまう病気で、治療が遅れると下半身の運動機能の著しく低下します。下半身の運動機能の低下は全身の動作にも大きな影響するため、QOLにも大きく響いてきます。
ペルテス病は、3~13歳くらいの幼い子供が発症し女児よりも男児の発症数が多く、とくに5~8歳くらいの年齢層に多く発症する傾向があります。
ペルテス病発症の原因は、現状では明らかにされていません。ただ、大腿骨骨頭が壊死する病気であることから、そこに対する栄養供給量の減少や、血流の滞りが原因ではないかと考えられています。
すべての細胞は血液に含まれている酸素や栄養をエネルギー源として機能を果たしていますが、これは骨にも該当することです。酸素や栄養を運ぶためには血流がスムーズである必要がありますが、何らかの理由で血流が滞り、骨細胞に供給される栄養も低下してしまうことが、ペルテス病を発症するメカニズムといわれています。
なお、血流が滞る原因として、繰り返される外傷やもともとの血行不良、受動喫煙などの外的要因が考えられていますが、これもはっきりとしたことはわかっていません。
ペルテス病の代表的な症状は、跛行という「足を引きずるようにして歩く」ことです。これは、大腿骨骨頭の壊死が進行していくことで太ももや股に強い痛みを感じることで、足をしっかりと上げて歩くのが難しくなってしまうためにこのような歩き方が出てきます。
幼い子供が痛みを大人に伝えるのは難しいです。はっきりとした跛行が見られなければ、ペルテス病の症状を見逃してしまうことも少なくないでしょう。
大腿骨骨頭の壊死は進行していきますので、発見・治療が遅れると壊死して弱った大腿骨骨頭が潰れて変形し、装具を装着しても歩行が困難になってしまうことがあります。
歩き方に不自然さがないかどうか、股関節や太ももなどをさすったりしていないかなど、気になる様子が見られるときは早めに病院に相談しましょう。
ペルテス病の治療は、骨には再生能力を利用して壊死が発生している大腿骨骨頭を整えていくことが主となっています。
代表的な治療法として、初期の段階では股関節の癒着を防ぐための牽引治療が行われます。これは両足に重りをつけ引っぱられた状態で過ごす治療法です。
次に壊死が起こっており、その部分の骨頭が元の状態に再生されるまでの間には装具療法が選択されます。これは装具を装着することで患者さんの動きをサポートすると共に、大腿骨骨頭にかかる負担を軽減する意味合いがある「保存療法」として行われます。
そして壊死の進行がかなり進んでいる、また骨頭が潰れ変形している、装具装着による状況の改善が難しいと判断された場合には手術療法が選択されることもあります。
ペルテス病に対して行う手術は大きく分けると次の2つの方法があります。
股関節に近い大腿骨の一部を人為的に切断し、大腿骨頭の向きを変えて股関節の内部に深くはめ込む手術方法です。人為的な骨折を起こすと、骨が修復する際に骨への血流が改善し、ペルテス病の原因ともされる骨への血流不足を改善することができるとされています。
一方で、大腿骨頭の向きを変えることで脚の長さに左右さが出ることもあり、変える向きや角度は慎重に決定しなければなりません。
骨盤の骨の一部を人為的に切断し、大腿骨頭を包む臼蓋の向きを変える手術方法です。骨折を引き起こすことで骨への血流を改善するという根本的な原理は大腿骨頭内反切り術と同様ですが、大腿骨自体には手を加えないため脚の長さが変わることは少ないとされています。
小さい子供に歩行困難などの症状がみられたら、ペルテス病の可能性があります。壊死状態が進行してしまうと、装具をつけても歩行が難しくなってしまうことがあるので、異変がみられたらすぐに病院へ連れていきましょう。