再生不良性貧血とは ~ その特徴と原因について

2017/12/6

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

貧血にもいくつか種類がありますが、造血細胞という血液をつくる細胞の異常が原因で起こる貧血のことを再生不良性貧血といいます。この記事では、再生不良性貧血の原因や特徴など、基礎知識をまとめています。

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再生不良性貧血とは?

再生不良性貧血とは、血液の工場である骨髄で「造血幹細胞」が正常に働かなくなり、血液中の酸素を運ぶ「赤血球」、免疫を担当する「白血球」、出血を止める「血小板」のすべてあるいは一部が十分につくれなくなる病気です。
だるさや耳鳴り、めまい、動悸、息切れ、鼻血や理由がはっきりしない内出血、発熱や下痢などのさまざまな症状を起こします。

国内での発症は年間100万人当たり約8人とされ、10~20代と70~80代に多く発症するという特徴があります。
原因は完全にはわかっておらず、重症化すると完治が難しく長期間の治療が必要となることから、厚生労働省から特定疾患難病に指定されています。

再生不良性貧血は他の貧血とどう違うの?

貧血というと、貧血の7割を占めるといわれる「鉄欠乏性貧血」が浮かぶ人も多いでしょう。これは鉄分の不足が赤血球の不足を起こすもので、通常は鉄分をとれば自然に治っていきます。

しかしそれ以外にも貧血には原因によりさまざまな種類があります。
再生不良性貧血は、上記でも説明したように骨髄で血液を作る造血幹細胞が傷害を起こして血液がつくれなくなり、赤血球だけでなく白血球、血小板などさまざまな成分が不足して生命が危険にさらされる病気です。

貧血にはその他にも、赤血球が寿命よりも早く壊れてしまう「溶血性貧血」、腎臓機能の低下による「腎性貧血」、胃の障害などによる「巨赤芽球性貧血」など「悪性貧血」といったものがあります。

再生不良性貧血が起こる原因は何?

先天性のものと後天性のものがありますが、先天性のものはまれです。後天性のものはさらに原因不明の「特発性」のものと原因がわかっている「続発性」のものに分けられ、全体の9割以上は特発性といわれています。

特発性再生不良性貧血の多くは、免疫をつかさどる細胞がなんらかの原因で自分の造血幹細胞を攻撃し障害を与えてしまうことによって発症すると考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。造血幹細胞自体の異常が原因である場合があるともいわれています。
続発性のものの原因としては、薬剤の副作用や放射線、ベンゼンなどの化学物質の影響、肝炎ウイルスやヒトパルボウイルスB19(PVB19)などのウイルスなどが挙げられます。

再生不良性貧血の治療法について

治療法は大きく分けて「造血機能回復のための治療」と「症状改善のための治療」の2種類があります。
造血機能回復のための治療としては、腎臓から造血幹細胞が赤血球をつくるように働きかける「タンパク同化ステロイド療法」、薬によって造血幹細胞を傷つける白血球を抑える「免疫抑制療法」、骨髄細胞を他の人の正常な細胞と取り換える「骨髄移植」があります。

最近では骨髄移植ではなくへその緒と胎盤中に含まれる血液を使う「さい帯血移植」も行われています。症状改善のための治療はいわゆる「支持療法」で、赤血球や血小板の輸血、白血球を増やすホルモンの投与、抗菌薬の内服などがあります。

おわりに:難病指定されてはいるが寛解が期待できる。適切な治療が重要!

再生不良性貧血は、以前は死亡率の高い病気でしたが、現在では早期に治療を開始すれば7割以上に回復が見込めるものとなっています。疑われる症状があれば、早めに専門医に相談し適切な治療を受けるようにしましょう。

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