褥瘡(じょくそう)治療の注意点 ― 正しい体位変換を身につけよう

2017/12/8 記事改定日: 2018/6/20
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

褥瘡(じょくそう)とは、いわゆる床ずれのことであり、寝たきりになった人がお尻などの皮膚がすりむけた状態になってしまうことを言います。褥瘡ができる原因と治療する方法について解説するので、発症予防に役立ててください。

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褥瘡(じょくそう)とは?

何かしらの病気で寝たきりの状態が続いて、お尻などの皮膚がすりむけて潰瘍になっている状態を褥瘡といいます。いわゆる「床ずれ」とされるものです。褥瘡は、表面的に体重がかかっている部分の皮膚が圧迫して起こることが多いですが、骨に近い組織が傷ついている場合も褥瘡のひとつとされています。
脊髄損傷や脳梗塞などが原因で寝たきりになると、適切な対処をしなければ大半の人は褥瘡になってしまいます。高齢化社会という背景の中で、脳梗塞などの罹患者が増えるのに比例して、褥瘡の発生頻度も増えているといわれています。

褥瘡が発症するのは何故?

健康な人であれば、無意識のうちにでも体の位置を変えたり、向きを変えたりすることで同じ場所に負担がかからないようにしています。
しかし寝たきりで動けない人は、自分の力で体の方向や位置を変更できません。すると同じ部分が体重で長時間圧迫されてしまうことになります。このように同じ部分への圧迫が長期間続いてしまうことで、皮膚に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり褥瘡ができてしまうと考えられています。

また、寝たきりの人や高齢者は栄養状態が悪くなっていることが多く、むくみが強くなっていたり、皮膚が弱くなっているため、褥瘡ができやすい体質になる傾向があります。その他、摩擦やずれを繰り返すことも褥瘡ができる原因になります。

褥瘡は治すことができるの?

褥瘡はすぐに治ることはなく、重度になると完治しないこともありますが、正しく治療と予防を行うことで少しずつ改善させることはできます。症状を軽減するだけでも生活に良い影響を与えることになるため、積極的に予防と治療に取り組みましょう。

まず、手軽な治療法としては塗り薬を使うことをおすすめします。圧迫されている皮膚の部分に細菌などの感染がある場合や、感染が落ち着いている場合、保湿をして褥瘡の部分を保護する必要がある場合など、患者よって必要な薬が変わってきますので、使う薬については必ず医師に相談しましょう。

水疱ができている場合には、大きさなどによって内容液を排出する処置が必要になることもありますが、小さい水疱であれば水疱を破らないように保護し、外用薬で対応しましょう。潰瘍などが見られる場合には酸化亜鉛などを用いて治療をするのが一般的とされています。

褥瘡ができているときは、まず患部を洗浄し清潔にすることが大切です。細菌に感染してしまうと、治療期間も伸びてしまいます。ひどい場合には褥瘡が他の部位に拡がってしまうこともあるのです。褥瘡の症状が軽い状態でも、定期的に消毒や洗浄をして感染を防ぎ、清潔に保つようにしましょう。

褥瘡の治療薬

褥瘡には患部に直接塗るや貼る薬が使用されます。様々な種類のものがあり、失われた皮膚組織の再生を促すものや、感染症を予防するものなどがあります。
発症初期のものであれば、アズレン(ジメチルイソプロピルアズレン)やプロスタグランジンE1など塗り薬やハイドロロコイドドレッシングの貼付によって上皮の再生を促します。
また、壊死組織や細菌感染がある場合には、スルファジアジン銀が配合された塗り薬を使用して、細菌感染の予防や壊死組織の除去を行います。
さらに、褥瘡が深くなり、水っぽくなった場合にはアルギン酸塩やポリウレタンフォームなどが配合された張り薬を使用することもあります。

栄養

寝たきりや病気などによって低栄養状態に陥ると、皮膚に十分な栄養が行きわたらず、組織が脆弱化するために褥瘡を発症するリスクが高くなります。
このため、褥瘡の危険がある人や褥瘡を持っている人は適切な栄養管理が必要となるのです。

口から食べられる人は高カロリーで高タンパク質のサプリメントを食事の他にも摂り、胃瘻の人は適正なカロリーの流動食を摂らせるようにしましょう。また、中心静脈栄養を行っている人は、カロリーやタンパク質が不足しがちなので、できるだけ胃瘻などの経腸栄養を行うように心がけるとよいです。

褥瘡の人の体位変換

褥瘡の発症と悪化予防のためには腰や臀部、踵など特定の部位に長時間にわたって圧迫がかからないようにこまめに体位交換を行うことが何よりも大切です。
体位交換は二時間に一度は行い、寝具との接地面をズラしていくようにします。接地面に大きめのビーズクッションやまくらなどを入れ、圧迫がかかる部位を変えるのです。
また、体重の圧が分散されるようなエアマットなども販売されていますのでためしてみるとよいでしょう。

体位変換のやり方

おわりに:褥瘡は同じ部位に負担がかかり続けることで起こる。定期的に体位変換をしてあげ、患部の清潔を保とう!

褥瘡は、寝たきりになってしまったことで動けず、同じ部位が圧迫され続けてしまうことで起こります。まずは予防として、まめに体位変換してあげるようにしましょう。また、褥瘡ができてしまった場合は、感染症を防ぐことが重要です。患部を洗浄して清潔を保つようにしてください。

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