アスペルガー症候群とは?年齢別の特徴と得られる支援について

2017/12/11 記事改定日: 2018/5/28
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

アスペルガー症候群(AS)は、現在は自閉症スペクトラム障害(ASD)と呼ばれる発達障害の一種です。言語障害のようなはっきりとした症状が出ないことも多いため、発見が遅れることも多いといわれています。この記事では、アスペルガー症候群の特徴を年齢別でまとめています。また、利用できる支援についても紹介しているので参考にしてください。

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アスペルガー症候群とは?何が原因なの?

「アスペルガー症候群(AS)」は近年になって認知度が広まった発達障害で、「自閉症」などとともに「自閉症スペクトラム障害(ASD)」ともよばれます。
知性や言語に障害はないものの、対人コミュニケーション能力や社会性、想像性に問題をもちます。本人は人間関係がうまくつくれず「生きづらさ」を抱えることが多いものの、外からはわかりにくく理解を得られないことが少なくありません。

原因

原因ははっきりとしませんが先天的なもので、何らかの脳機能の障害と考えられています。4000人に1人の割合で発症するとされていますが、診断されないまま悩んでいる人も多いため、実際の数はもっと多いのではないかと予想されています。

アスペルガー症候群の代表的な3つの症状

大きく分けて「コミュニケーション」や「対人関係」の障害、「限定的な物事への興味とこだわり」の3つの症状があります。

具体的には、表情を読み取ったり、遠回しにものを言うなどのあいまいなことが苦手で、名前を呼ばれないと自分だと気づかない、想像力が弱く明確な指示がないと動けない、周りの変化に気づかないなどがあります。

また、場の空気を読めず相手の気持の理解が苦手で、思ったままを口にしてしまう傾向があり、いったん何かに興味を持つと過剰に熱中してこだわり、高い記憶力や集中力をみせてやり続けようとします。マイルールにかたくなで、無理に変えると混乱してしまうことも特徴です。

アスペルガー症候群は、大人や子供(年齢別)で特徴に違いはあるの?

子供(0歳~17歳)のアスペルガー症候群の特徴

乳児期から音に敏感に反応したり、ひとつのことに執着したり目を合わせないなどの特徴がありますが、症状が見えやすくなるのは幼児期以降です。母親をはじめ人の表情を読めず、何度も説明しないと理解できない、一人遊びに熱中するなどの傾向があらわれますが、適切な治療と療育でその後の生きづらさは変わっていくと考えられています。

小学生以降になると得意不得意が極端に出て学習障害があらわれる場合があり、規則や法則性には忠実ですが急な変更に対応できない、周囲と協調できず集団遊びができないこともあります。周りから浮いて孤立し、中高生になると最悪の場合いじめなどで不登校に陥るなどの問題を抱えてしまう可能性もあるのです。

大人(18歳~)のアスペルガー症候群の特徴

コミュニケーションが苦手で状況判断や協調ができず、限定的なこだわりや不注意などが人間関係づくりや仕事上のミスなどにつながっていくようになります。また、スケジュール管理ができず遅刻や手際の悪さが目立つ、職場でのつき合いや上司との関係に悩むなど、さまざまな問題が起こります。

ただし、自分の得意不得意を理解し苦手なことへの対応方法を工夫していくことで、逆にこだわりや集中力を個性として活かすこともできると考えられています。

周りに理解されないまま生きづらさを抱えてきた場合には、二次障害としてうつ病やパニック障害を引き起こしたり、ひきこもりや家庭内暴力を起こしてしまう可能性もあります。

アスペルガー症候群は、治療できる?周りはどうやって対応すればいいの?

残念ながら、アスペルガー症候群を根本から治す方法はありません。しかし、アスペルガー症候群によって生じる抑うつ気分を始めとした気分障害や不安障害、不眠などを改善するための対症療法が有効な場合があります。
また、最近では心理療法の一つである認知行動療法でアスペルガー症候群に特徴的な「こだわり」の認識を改善するという治療法も注目を集めています。

しかし、アスペルガー症候群は、患者本人への治療だけでは「生きづらさ」を改善することはできないことが多く、家族や学校、職場などの周囲の人が適切な対応を取ることが必要となります。そのためにも、周囲の人が患者を理解して協力できる環境を作ることが大切です。

支援機関について

アスペルガー症候群の人や家族には利用できる支援機関がいくつかあります。患者の年齢によって異なりますが、次のような機関を積極的に利用するようにしましょう。

① 小児

未就学児は発達支援センターや療育支援センターなどの通所サービスが利用できます。これはセンターへ通って専門スタッフが基本的な生活習慣の指導や集団生活への円滑な導入を目指して様々な教育的支援を行うものです。
また、小学生から高校生までは放課後や夏休みなどの長期休暇に利用できる放課後等デイサービスがおすすめです。これは、放課後や長期休みに通所して、日常生活や学業、技能など様々な能力の向上を目指して学習を行うものです。
その他、患者の家族が利用できる相談窓口として、地域の保健所や児童相談所などが利用でき、専門スタッフが様々な不安や疑問を聞き適切なアドバイスを得ることができます。

② 大人

就学を終えた大人は、発達障害者支援センターを利用することができます。これは、地域での保健や福祉、教育、労働など様々な機関が連携を行って患者を総合的に地域で支援することを目的としてもので、専門スタッフから適切なアドバイスや具体的な支援の調整・指導を得ることができます。
また、就労に関してはハローワークや地域障害者職業センターで職業リハビリを含めた支援を受けることができます。
このように、アスペルガー症候群の人や家族は多くの支援機関を利用することが可能です。お住いの自治体やNPO法人などが主体となるものが多く、それぞれの希望やライフスタイルに合った機関を選ぶようにしましょう。

障害者手帳はもらえる?

アスペルガー症候群で発行される可能性がある障害者手帳とは、精神保健福祉法に基づいて発行される精神障碍者保健福祉手帳です。これは、何らかの精神疾患がある人が円滑に社会生活を行えるように支援を行うもので、税金の一部免除や公共施設や交通機関の利用料の減免など様々な経済的メリットを受けることができます。また、就職時に配慮を得られることもあります。
アスペルガー症候群を始めとした発達障害の人も障害者手帳を受けることは可能ですが、認定には厳密な審査が必要であるため、申請したからといって必ずしも発行がうけられるわけではないので、主治医とよく相談してから行うようにしましょう。

おわりに:早期発見と対処の工夫で「生きづらさ」は軽減できる。早めに専門機関に相談を

外からはわかりづらい障害ですが、周りが気づき早いうちから治療と療育を行うことで、本人の生きづらさを軽減し特性を個性として活かすことも可能です。早めに支援機関などに相談し納得のいく医療機関を選んで対処するようにしましょう。

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