記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/11 記事改定日: 2018/5/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
アスペルガー症候群の治療法のひとつとして薬物療法がありますが、その他にはどんな治療が有効とされているのでしょうか。この記事ではアスペルガー症候群の薬物治療と薬以外の対処法についてまとめています。
「アスペルガー症候群(AS)」は、主に対人コミュニケーション能力や社会性、想像性に障害がある、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」のひとつです。
治療では薬物療法が用いられますが、特効薬があるわけではありません。本来、薬物療法は必要なものではなく、むしろできるだけ使わない方が良いとされています。
しかしアスペルガー症候群の人は、症状が要因で社会生活での精神的ストレスを抱えることが多く、それによって「二次障害」を起こしやすい傾向があります。
そのため、二次的な精神症状、イライラや攻撃性、衝動性、落ち込みや不安、不眠や食欲のなさなどの改善のために、あくまで補助的なものとして投薬が行われます。ただし、「うつ病」「強迫性障害」「不安障害」「アルコール依存症」などにかかりやすいため、薬物療法が必要となるケースが多いといわれています。
アスペルガー症候群に対する特効薬はありませんが、上記でも説明したように二次的な症状を改善するために用いられる薬はあります。代表的なものとして、「抗うつ剤」「抗精神病薬」「気分安定薬」などが挙げられます。
抗うつ剤は、落ち込みや不安をやわらげたりこだわりや強迫症状を改善するなどの効果が期待できる薬です。気分を落ちつけて攻撃性やイライラなどの改善に役立つこともあります。
抗精神病薬はドーパミンの作用を弱める薬で、本来は「統合失調症」や「双極性障害(躁うつ病)」に用いられます。幻覚や妄想、興奮や怒りっぽさの改善に使用されます。
気分安定薬は「抗てんかん薬」ともよばれ、主に双極性障害に用いられます。興奮や多動、攻撃性や衝動性、感覚過敏に対して使われることがあり、自閉症スペクトラム障害がてんかんを合併することが多いことから発作を抑えるために投与されることもあります。
個人差はあるものの、アスペルガー症候群の人には薬が効きやすく、また副作用も出やすい傾向があるといわれています。
理由はわかっていませんが、症状のひとつに「感覚過敏性」があることから薬物に対しても過敏に反応するのではないかと考えられています。
副作用の悩みは精神疾患を引き寄せてしまう可能性があります。そのため、薬物治療はなるべく少量から開始し、薬はあくまで一時的な補助薬としての使用することが望ましいとされています。これは常用すると、薬がないと不安になり大量に服用するようになってしまう可能性があるからです。
また、未成年者、特にまだ身体が発達段階にある幼児や小児にはできる限り使わない方がよいとされ、投薬を行わざるを得ない場合には特に副作用に気をつけ発達を妨げたり薬漬けとならないよう注意しましょう。
アスペルガー症候群は興味の幅が大きく限定されており、こだわりが強く、他者との良好な関係を築くことができない特徴があります。
これらの症状は薬である程度軽減することもできますが、基本的には日常生活の中で興味のある分野に関わる時間をなるべく多くする、無理に他者と交流を持とうとしない、など問題となる症状が現れにくい環境を整えることが大切です。
しかし、薬で症状を軽くすることも大切ですので、医師から薬を処方された場合には自己判断で中止したり減薬したりせず、決められた通りに服用するようにしましょう。
認知行動療法は、精神疾患の患者に広く適応される心理療法の一つです。具体的には、行動や精神面に問題を生じている出来事やこだわりなどが自分にどのような問題を起こしているのかを認識し、その出来事やこだわりに対する歪んだ認識を徐々に改善していくというものです。
これは、例えば「自分はダメな人間だ」というような極めて自己否定感が強い感情を持っている人が、抑うつ状態となっている場合、「自分はダメな人間だ」という認識の歪みをただすことで抑うつ気分も改善する効果が期待できるというものです。
特に成人のアスペルガー症候群では、抑うつ状態や不安障害などを併発しやすく、認知行動療法はそれらの症状に対して効果があると考えられています。また、特徴的なこだわりや興味の限定などにも効果があることが分かってきており、アスペルガー症候群への導入が広がりつつあるのが現状です。
アスペルガー症候群の治療薬はこれからの開発が期待されている状態で、現在はまだありません。薬物療法は二次的な精神症状の改善のために使用されるもので、大量に使用すると副作用などデメリットの方が大きくなってしまいます。自己判断で中止することは危険ですが、薬で解決しようとしない、期待し過ぎないことも大切になってきます。