記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
国の難病に指定されている「マルファン症候群」。今回はこのマルファン症候群のリスクや検査方法を中心に解説していきます。
マルファン症候群とは結合組織(組織の間を埋めるため、全身に存在する組織。身体の中にある組織を支えたり、力を伝達する働きがある)に障害があることから、骨格・眼・心血管・肺などに症状が現れる先天性の遺伝子疾患です。今のところ治療方法が存在しないことから、厚生労働省によって特定疾患に指定されています。
マルファン症候群では、結合組織の中にあるタンパク質が十分に機能しないことにより、全身に奇形等の症状があらわれます。性別、人種、住んでいる地域に関係なく約5000人に1人の頻度で発症すると考えられています。細かい症状は1人ひとり異なりますが、マルファン症候群は遺伝子疾患であるため遺伝子の変化はその遺伝子を持つ親から子へと伝わることになります。
マルファン症候群は結合組織の多様な疾患であり、骨格や肺、目、心臓、血管に症状があらわれます。しかし、症状が必ず現れるわけではなくその度合も一人ひとり異なります。そのため、マルファン症候群であると気づくのに遅れると急死の可能性が高くなります。
マルファン症候群の患者さんは大動脈壁に構造的異常があることが多いため、この壁の強度が弱くなってしまっています。そのため、血圧が上がると容易に動脈壁に亀裂が生じてしまい(解離)、解離した動脈壁内に血液が流れ込んでしまうことでコブ(解離性動脈瘤)が形成されるようになります。この解離性大動脈瘤は自覚症状がほとんどないことから徐々に大きくなってしまい、最終的には何らかのきっかけで動脈壁が破れ、動脈瘤が破裂して死に至ります。動脈瘤が存在するかどうかは通常の健康診断で発見できないことから、治療のための対処が遅れてしまうことで急死してしまう可能性があります。
マルファン症候群の診断のためには、6つの主な症状(目、骨格、心臓血管、肺、皮膚、脊柱硬膜)に関する検査の後、家族歴も考慮の上、いくつかの症状があらわれていないかを確認し、医師による総合的に判断されることになります。代表的な検査方法としては、心臓血管検査(超音波エコー検査、CTまたはMRIなどを用いて拡張、解離、便の閉鎖不全の有無を検査)、骨格検査(骨のX線検査、側弯や胸骨の扁形がないかどうか)、目の検査(近視等の検査、細隙灯顕微鏡を用いた水晶体偏位の検査)、脊柱硬膜の検査(CTまたはMRIなどを用い、脊柱硬膜の拡張を検査)などがあります。
マルファン症候群を完治させるための治療方法は現段階ではありません。しかし、症状が出ていなかったとしても定期的に検査を受けて状態を確認することが大切です。
マルファン症候群の症状のうち、特に心臓血管の症状は命に関わります。例えば、動脈の膨らみが進んだ場合や、動脈解離が起こってしまっている場合には、外科手術により動脈を人工血管に置き換えることで症状を改善することができます。外科手術でなくとも、適切な薬による治療を受けることで血圧を下げ、動脈の変化を止めることもできます。そのため、定期的に検査を受けることで定期的に自身の状態を確認することが重要となります。
マルファン症候群は急死する恐れのある疾患のため、定期的な検査を受け、状態を確認することが非常に重要です。症状によっては手術や投薬によって対処可能なものもあるので、継続的な観察・治療を行っていきましょう。