記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/21 記事改定日: 2018/4/17
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
線維筋痛症とは、体の広範囲に痛みが出る病気であり、診断には18個の圧痛点が使われます。リウマチなどと似た症状が現れるため診断が難しい病気です。この記事では線維筋痛症の症状と診断について詳しく解説していきます。
線維筋痛症は、広範な部分に慢性的な痛みが生じ、一部に圧痛を伴うのが特徴です。一日を通して朝に症状がひどくなり、関節リウマチのような関節のこわばりが起こることもあります。
しかし、血液検査や筋肉、神経などの検査では異常が見られず、詳しい発症メカニズムは解明されていません。
慢性的な痛みを感じることで疲労感や倦怠感がひどくなり、抑うつ状態や睡眠不足に陥ることもあります。また、頭痛や胃腸症状、月経異常、顎関節症状、アレルギー症状など全身に多くの不定愁訴が現れ、検査上は異常がないことから、周囲からは「詐病」や「怠け病」などと思われてしまうことがあります。
線維筋痛症は、様々な検査を行っても異常がなく、診断は患者からの問診と身体診察が基準となります。
診断基準は以下の通りです。(アメリカリウマチ学会線維筋痛症分類基準を基に)
線維筋痛症の圧痛点
この二つの基準のうち、②は医師によって判断が異なることもあるため、必ずしも画一した基準ではありません。首、後頭部、肩の両側の6か所、胸、肩甲骨、臀部、大転子(太ももの付け根の外側)、膝、腕の両側の12か所の18か所の圧痛点にあわせて、左右の大腿四頭筋の外側の2か所を加えた20か所を基準とすることもあります。アメリカでは大腿四頭筋の外側は圧痛点に含まず18か所の指定のみですが、日本では圧痛点に含むこともあります。
正式な基準では、これらの圧痛点を4kgfの圧力で押すことと定められていますが、数値を正確に計測することは難しく、押す強さに関しては医師の判断が基準になります。
身体の広い範囲に痛みがあり、それが長く続いている場合は線維筋痛症の可能性があります。もちろん他の原因も否定できませんが、放置せず早めに病院を受診し、検査を受けて原因を特定することが大切です。ただし線維筋痛症は、血液検査やX線(レントゲン)やCT検査などの画像検査では異常が出ないため、これらの検査では診断することができません。
線維筋痛症の診断は、痛みがどのくらいの範囲で起こっているか、どのくらいの痛みが起こっているかなどを細かく問診して行います。
の2点は診断基準になります。圧痛点とは、押すを痛みを感じるポイントのことで、上記でも紹介したように背中や大腿、臀部など全身に点在しています。ただし圧痛点に関しては、11か所以上なくても線維筋痛症と診断されることもあります。
画像診断や血液検査で異常は見つかりませんが、リウマチなどの類似疾患と見分けるために血液検査や画像検査が行われることもあります。
診断法の問題点としてまず挙げられるのが、血液検査やMRIやCTなどの画像検査をしても、異常が見つからないということです。
また、診断は問診で症状を細かくチェックしていくしかなく、決定打となるような特別な検査方法がないということも診断の問題点として挙げられるでしょう。
そして、圧痛点が11か所以下の線維筋痛症の人もいるため、診断には豊富な知識と経験が必要になってきます。線維筋痛症を専門に扱う医師の数が患者数に比べると少ない状態であることも問題点のひとつといえるでしょう。
線維筋痛症は、全身に痛みが広がっていく病気として知られていますが、悪化していくと激しい疲労感、頭痛、目や口の乾き、しびれ、全身のこわばり、睡眠障害など様々な症状が出てくることもあります。こうした症状は慢性化しやすい傾向にありますので、線維筋痛症と診断されたら早めに治療を開始することが大事です。
また、怪我や精神的ストレスが発病のきっかけとなることもありますので注意しましょう。
治療方法は薬物療法や運動療法、心理療法や温熱療法などがありますが、線維筋痛症は原因がわかっていないこともあり、すべての発症者に共通する治療方法というものはありません。それぞれの症状に応じた対症療法が必要となります。
線維筋痛症は全身の広い範囲に痛みが現れる病気ですが、症状の現れ方には個人差があります。特定の検査もないため、症状の問診で診断をするしかなく、診断には豊富な経験が必要です。治療も症状にあわせた治療になるため、臨床経験が求められることも多いでしょう。自分にあった信頼できる専門医を探し、根気よく治療を続けていきましょう。