鼠径ヘルニア治療に手術は必要?大人と子供の違いとは?

2017/12/13 記事改定日: 2019/3/13
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

鼠径ヘルニアとは、鼠径部の筋膜の隙間から腸の一部が飛び出してしまう病気です。軽度のうちは痛みなどの症状は現れませんが、悪化すると嵌頓(かんとん)を引き起こして深刻な状態に発展する可能性があります。
この記事では鼠径ヘルニアの治療について詳しく解説しています。

鼠径ヘルニアは治療方法は?手術以外の方法はあるの?

体の中の正しい位置から組織が飛び出した状態をヘルニアといい、鼠径ヘルニアは鼠径部から腹膜や腸の一部がはみ出してしまう状態を示します。
鼠径部の皮膚の内側に筋膜の隙間から腸が出てくる症例が多く、一般に脱腸と呼ばれることもあります。
鼠径ヘルニアになっても最初のうちは押せば引っ込んでいきますが、そのうち股関節あたりに詰まっているような違和感が出はじめ、次第に膨らみが大きくなり痛みを伴うこともあります。
膨らみが硬くなったり、抑えても引っ込まなくなったりしてくる嵌頓(かんとん)を起こしてる可能性があり、この状態になると激しい痛みや吐き気を感じることもあります。

鼠径ヘルニアの治療は、基本的には手術となります。一昔前までは、脱腸帯と呼ばれるヘルニアバンドで対策をするという選択肢をとる人もいましたが、これは治療と言うよりも、飛び出さないように抑えているだけの処置です。ヘルニアバンドを外せばまた飛び出してしまいます。

鼠径ヘルニアは、良性の病気に分類されますが、嵌頓になると緊急手術が必要になる場合もあります。
大人の鼠径ヘルニアは自然に治る事はありません。根本治癒のためには手術が必要になります。

鼠径ヘルニアの2つの手術方法

鼠径ヘルニア根本的な治療は手術のみであり、手術法として鼠径部切開法と腹腔鏡法の2つが挙げられます。

鼠径部切開法

鼠径部切開法は鼠径部を2センチから3センチ切開して行う術式です。ヘルニア嚢と呼ばれる袋状になった部分で腸が入り込んでいるところの短縮と出口の閉鎖をしていきます。18歳以下の男女と、出産の予定がある30歳前後の女性に適しているとされています。

腹腔鏡法

腹腔鏡法は、筋膜の脆弱な部分をおなかの内部からメッシュを利用して補強する手術法です。数ミリメートルの小さな傷がいくつかつくだけで回復が早いことがメリットであり、内鼠径ヘルニアや肥満の人に向いています。また、腹腔内に炭酸ガスを注入して観察をすることができるので確実な診断が可能です。

問診、視診、触診、エコーなどを使い診断や説明を経て、どの術式が適切かを判断していきます。

大人と子供で治療方法は違うの?

大人の鼠径ヘルニアと子どもの鼠径ヘルニアは発症原因が異なるため、治療法もそれぞれ異なります。
大人の場合は、加齢などによる鼠径管付近の筋肉・筋膜の脆弱化に加え、肥満や妊娠、力仕事などによる過度な腹圧が発症の原因となります。
このため、治療では鼠径管から飛び出した腸管などをお腹の中へ戻して、メッシュなどの人工物を用いて鼠径管を塞いで補強する手術が行われます。

一方、子供の場合は生まれつきのもので、胎児期の内鼠径輪が閉鎖せずにそのままの状態となっていることが原因で発症します。単に内鼠径輪が開存していることが原因で、筋肉や筋膜などには異常が無いため、手術は内鼠径輪を塞ぐのみの手術が行われます。

おわりに:鼠径ヘルニアの治療法は手術のみ。診断後は早めに治療しよう。

成人以降の鼠径ヘルニアは自然に治癒する事はありません。したがって、現状では手術をする以外に根本治癒の方法がありません。ヘルニアバンドを使えば一時的に症状を軽くする事はできますが、皮膚障害や精巣萎縮を招く可能性があることが指摘されています。
鼠径ヘルニアが重症化して嵌頓を起こしてしまうと、命に関わる場合もあります。医師と相談しながら、適したタイミングで手術を受けられるように備えましょう。

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