糖尿病足病変のフットケアと靴選びのポイントとは?

2017/12/14 記事改定日: 2018/3/8
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病になったら特に注意すべき症状のひとつが、足の壊疽や潰瘍を引き起こす「糖尿病足病変」です。今回は糖尿病患者さん向けに、糖尿病足病変を予防するためのフットケアの内容とポイントをご紹介していきます。

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糖尿病足病変とは

糖尿病足病変は糖尿病を患っている人の足に生じる腫瘍や壊疽などのトラブルを指します。
まず、糖尿病を発症すると、抵抗力が低下することで足にタコや水虫ができやすくなります。
健康な人であればそのままの状態で症状が続きますが、抵抗力が弱まっている糖尿病患者の場合は、小さな病変から腫瘍や壊疽にまで進行してしまうケースが少なくありません。

また、糖尿病が原因の血液障害や神経障害といった合併症や高血糖などによって足の感覚が低下するために痛みを感じにくくなり、深刻な足腫瘍や足の壊疽(えそ)まで進行していても気が付かない危険性がたあるのです。壊疽が広範囲に及んでいたり重症感染を合併した足潰瘍にまで進行したりした場合には、足を切断しなければならない可能性もあります。

糖尿病足病変のフットケアの内容は?

糖尿病足病変は足の小さな傷やタコなどを放置するうちに細菌感染を起こし、どんどん症状が悪化して気が付いたときには腫瘍や壊疽(えそ)などを起こし、切断を余儀なくされることもあります。
そのため、毎日のフットケアによって糖尿病足病変の予防や早期発見を心掛けることが大切です。

〈1〉毎日足の状態を観察する

潰瘍や壊疽(えそ)を予防するには「早期発見、早期治療」が大変重要になってきます。
見えないところは鏡を使ったりご家族等に協力してもらいながら、毎日足の状態をじっくり観察するようにしましょう。長時間歩いた後や運動後は特に念入りにチェックしてください。

〈2〉足を清潔に保つ

細菌感染を防ぐために足を清潔に保ちましょう。
基本となるステップは【足を石けんで洗う→ 乾かす→ 保湿クリームなどで保湿する】の3つです。
石けんはよく泡立てて、柔らかいタオルやスポンジで優しく洗いましょう。指の間も忘れずに洗いましょう。洗った後は皮膚を傷つけないよう、こすらずに押さえるようにして水気を拭き取りましょう。

皮膚が乾燥している場合は保湿クリームなどを塗って保湿しましょう。ただし、指の間には保湿クリームを塗ると湿って水虫の原因になることがあるので、指の間には保湿剤を使わないようにしましょう。
また、病院から足とそれ以外の部位にもそれぞれ別の軟膏が処方されている場合は、決められた部位以外に塗らないよう心掛けることも大切です。

〈3〉足に合った靴を選ぶ

自分の足に合ったを選ぶことも、糖尿病足病変予防のポイントです。
靴を選ぶ際はつま先に1センチほどの余裕があり、足指の付け根の幅が適切で適度なゆとりがあるものを選びましょう。つま先部分の幅おがきつ過ぎると指が圧迫されて傷ができやすくなり、ゆる過ぎても足が靴の中で動いて傷付く原因になるからです。

靴の素材は革などの内貼りが柔らかいもので、内部に硬い縫い目がなく、靴底が安定してクッション性の良いものが最適です。靴紐やマジックバンドによって足の甲周りの調整ができるもの、散歩や運動を行うために履く靴はマジックテープなどによって足首が固定できるような安定性の良いものを選ぶことがポイントです。
また、靴を履く前に靴の中に異物がないかどうか確認しておくようにしましょう。

〈4〉素足はNG:靴下を履いて傷から足を守る

靴下を履くことは水虫の予防や足の保護になります。
靴下を選ぶときには吸湿性の良い綿素材の内側の縫い目がゴツゴツしていない、きつすぎない物を選んでください(水虫予防のために5本指タイプの靴下を選んでもよいです)。
ただし、靴下を重ねて履くと血行を妨げてしまう可能性があるので、いわゆる「重ね履き」は避けるようにしましょう。

〈5〉やけどに注意する

湯たんぽや電気カーペットなどによる低温やけどに注意しましょう。
基本的には使用を避けるのが望ましいですが、使用する場合は寝る前にはスイッチを切る、設定温度を最低にする、厚手のバスタオルで包むなど、やけどの予防対策をしっかり行うようにしてください。
また、バスや電車の温風吹き出し口にも注意しましょう。
夏の炎天下では素足で砂浜やプールサイドを歩くとやけどをしていても気づかない可能性があるので注意が必要です。

ちょっとした傷でも病院で診てもらおう

糖尿病足病変では毎日のフットケアによる足のチェックが重要なことはもちろん、タコやウオノメなどの何らかの傷ができた場合は自己判断で治療をせずに、早めに病院で診察を受けるようにしてください。

すぐに病院へ行けない時には、流水によって傷を洗った後に適切な消毒を行い、清潔なガーゼなどで保護しておきましょう。消毒は綿棒を消毒液に浸して傷に優しく塗って行ってください。消毒液には常に新しい綿棒を浸し、いったん傷に触れた綿棒は二度と消毒液に入れないようにして消毒液の清潔を保ちましょう。
傷の大小に関わらず、処置をした後はできるだけ早く病院で治療を受けてください。

おわりに:小さなケアの積み重ねが糖尿病足病変の発症予防につながる

足に傷はないか毎日チェックしたり、ゆとりのある靴を選んだり・・・小さなことだと思うかもしれませんが、これらのケアを続けることで糖尿病足病変を発症するリスクを大幅に減らすことができます。
フットケアを毎日継続して行い、糖尿病足病変をできるかぎり予防しましょう。

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