子供の嘔吐の対処法 ― 判断に困ったときにはどうしたらいい?

2017/12/13 記事改定日: 2018/6/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

嘔吐は子供に頻繁に見られる症状であり、そのほとんどは心配がないものとされています。では、子供はなぜ嘔吐をしてしまうのでしょうか。この記事では子供の嘔吐の原因について詳しく解説しています。対処法についても触れているので、もしものためにしっかり把握しておきましょう。

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そもそも、嘔吐はなぜ起こるのか?

嘔吐とは、胃や腸の内容物が逆流して口から外に出ることです。
体内に入った飲食物は消化器官(口腔・食道・胃・腸)を通過する過程で消化され、小腸および大腸で栄養素や水分が吸収され、最終的に、肛門から糞便という形で排泄されます。このプロセスに異常が生じ、飲食物が物理的に先に進めなくなると、嘔吐につながります。

また、乗り物酔いといった体のバランスが崩れるようなことなど、何らかの原因で脳にある嘔吐中枢が刺激された場合も、「気持ち悪い」という感覚が生じて吐き気につながり、嘔吐が起こります。

子供の嘔吐の原因は病気!?

感染症

子供の嘔吐の代表的な原因のひとつに、感染症があります。
下痢を伴う「感染性胃腸炎」が最も多いとされ、胃に炎症が起きて胃の機能が停滞する結果、嘔吐が生じます。この病気には、細菌性とウイルス性があります。

ウイルス性

ウイルス性の感染性胃腸炎としてよく知られているのが、冬季から春に発生しやすいロタウイルスです。乳幼児(0~6歳)に多く、便が白くなるといった点が特徴的で、感染力が強いため集団で流行する場合もあります。国立感染所研究所によれば、年間での感染性胃腸炎患者の42~58%がロタウイルスと推計されています。
その他、ノロウイルスや夏場に流行するエンテロウイルスなどもウイルス性胃腸炎の原因です。

細菌性

細菌性の胃腸炎は、腹痛、発熱、下痢といった特徴を持ち、便に血液が混じることもあります。 また脳炎や髄膜炎などの「頭蓋内感染症」でも嘔吐することがあります。この場合は発熱や頭痛を伴うことが多く、脳炎では異常な言動が見られることもあります。

アセトン血性嘔吐症

アセトン血性嘔吐症も、子供の嘔吐の代表的な原因のひとつです。これは自家中毒とも呼ばれ、一般的には運動会や遠足などで消耗した後、食事をしっかりと摂らずに寝てしまった翌朝、頻繁な嘔吐によりぐったりしてしまう症状をいいます。

この嘔吐は、体内の糖分が足りなくなると脂肪分を分解してエネルギーにしようとする状態になることと関係しており、脂肪分の代謝産物アセトンが体に蓄積することで発症するといわれています。

子供が吐いてしまったときの対処法

症状のチェック

子供が吐く原因は様々であり、それぞれ深刻度も違ってきます。

  • 熱の有無
  • 便の状態
  • 腹痛の有無
  • 頭痛の有無

など、嘔吐以外の症状を必ず丁寧にチェックしましょう。

嘔吐以外の症状がはっきりしている場合や嘔吐を繰り返す場合は、すぐに病院を受診してください。もし嘔吐以外に症状が見当たらず嘔吐が軽度であれば、しばらく様子を見てもいいでしょう。

危険な嘔吐のチェック項目

子供は体調や環境の変化など、些細な原因で嘔吐することがあり、非常にありふれた症状であるといえます。
しかし、中には危険な病気や症状が潜んでいる可能性があり、次のような場合には注意が必要です。

  • 頭を打った後の嘔吐
  • 明け方に繰り返される嘔吐
  • 発熱や血便を伴う嘔吐
  • 咳を伴う嘔吐
  • 発熱後、意識障害や痙攣をともなう嘔吐

これらの嘔吐は、脳内出血や脳腫瘍、脳炎などを生じている可能性や、喘息や重篤な感染症が原因である可能性があります。当てはまる場合にはなるべく早めに病院へ行くようにしましょう。

水分補給

吐いた後は水分補給が必要です。30分~1時間位時間をあけ、少量ずつ経口保水液を与え、吐かないかを観察します。吐かなければ、その後、少しずつ増やして与えしょう。目安としては、体重10kgの子に対し、500ccを4時間かけて飲ませる位が適切といわれます。

食事

水分を与えても嘔吐しなくなったことを確認したら、おかゆ、柔らかいパンなどを与えます。消化に時間のかかる肉類や繊維質の多い野菜類は、当初は避けた方がよいとされます。なお、子供は嘔吐の意味がよくわかっていません。ショックを受け、泣いたり怖がったりするケースもあるため、安心させ落ち着かせる精神的ケアも大切です。

嘔吐した子供におすすめのレシピ

子供の嘔吐は非常にありふれた症状であり、親であれば誰しも一度は嘔吐に苦しむ子を看病したことがあるでしょう。
嘔吐は基本的には、水分を多く摂り、症状が落ち着くのを待つことで改善しますが、少し食欲が出てきたら少量ずつから食事を再開しましょう。ここでは嘔吐をした子供にもよいレシピを紹介します。

① 中華風雑炊

柔らかくさっぱりした雑炊は嘔吐に苦しむときでも食べやすく、消化もよいので胃腸に負担をかけないため、おすすめのレシピです。
茶碗一杯分のごはんを適量の鶏がらスープに投入し、程よい硬さになった溶き卵を入れて、塩で味を整えたら完成です。
嘔吐が落ち着いてきたら雑炊の中にささみや白身魚などさっぱりした具材を入れるのもおすすめです。

② オニオンスープ

固形物が食べづらいときには、スープがよい味方です。特に玉ねぎには食べ物の消化を促す成分が含まれていますのでおすすめです。
玉ねぎの皮を剥き、そのままの状態で、玉ねぎが浸るほどの水を投入します。固形コンソメを入れ、30分ほど中火で煮込んで完成です。
玉ねぎは食べてもおいしいですが、食欲がないときは食べなくても玉ねぎの健康に良い成分はスープの中に溶けでしているので十分です。調子が良くなってきてら、ベーコンやニンジンなど他の具材も加えてみましょう。

夜間の嘔吐で判断に困るときはどうしたらいい?

子供は夜間、寝ている時に嘔吐することも多く、嘔吐を繰り返す場合、子供は成人よりも容易に脱水症になりやすいものです。また、何らかの重大な病気が隠れている可能性もあります。このため、多くの親御さんは夜間の嘔吐に右往左往することがあるでしょう。
普段からの対策としては、判断に迷ったときのために夜間診療を受け付けている病院を把握しておくことが大切です。
また、#8000の小児救急相談や#7119の救急相談センターなど子供の急な体調不良に対する相談を24時間体制で受け付ける電話相談も普及していますので、これらを活用するのもおすすめです。

おわりに:嘔吐の大半は心配がないもの。ただし不安がある場合は念のため病院に相談を

嘔吐は、多くの場合ウイルス性胃腸炎が原因となっており、基本的には大きな心配はいりません。しかし、嘔吐は原因の特定が難しく、重症な病気が潜んでいることもあります。いつもの様子との違いに気を配り、不安を覚えるようであれば受診しましょう。
もし判断に迷ったときは、#8000や#7119などに相談してもいいでしょう。

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