記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/20 記事改定日: 2018/5/30
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
リンパ浮腫とは、がんの手術や放射線治療のあとに、腕や脚がむくんでしまうことです。改善するためには、進行度合や症状など、患者の状態にあわせた適切な治療が必要になります。この記事では、リンパ浮腫の治療法について解説しています。
がんの手術治療でリンパ節を取り除いたり、放射線治療によってリンパの流れが停滞すると、生涯にわたって腕や脚がむくむことがあります。浮腫とはむくみのことであり、症状は早期、軽度から中等度、重度の3つに大別することができます。
早期では、自覚症状はあまりないため、リンパ浮腫に気づかないことも多いといわれています。今までは見えていた静脈が見えにくくなったり、皮膚をつまんだときにシワがよりにくいといった症状が起こることもあります。
軽度や中等度の症状では、腕や脚ががん治療の前よりも太くなり、腕や脚などが重く感じられるなどの症状が現れます。むくんだ場所にもよりますが、皮膚を指で押すと跡が残ることもあります。
重度の症状になると皮膚が硬くなっていき、関節が曲がりにくくなるといった症状が現れます。
リンパ浮腫に対する保存的な療法として
などがあり、症状に応じて行われます。また、リンパ浮腫治療が進行した場合には、「リンパ浮腫組織切除術」「リンパ誘導術」など手術を行うことがあります。
リンパ浮腫においてはスキンケア、医療リンパドレナージ、圧迫療法、圧迫下での運動療法の4つを症状に合わせた治療が行われます。
リンパ浮腫になると皮膚が通常よりも乾燥しやすい状態になります。そのため、保湿剤などを使用してスキンケアが行われます。また、皮膚の清潔を保ち、皮膚を傷つけないように気をつけることも重要です。
医療リンパドレナージはリンパの排出を目的としたマッサージです。腕や脚にたまったリンパ液をリンパ節へ流していくようにマッサージして、むくみの改善をはかります。美容サロンなどで行われているようなリンパマッサージやリンパドレナージとは違う手法です。
圧迫で皮下組織の圧力を高めることで、血管からの浸出液やリンパ液がたまるのを防ぎ、むくみを改善する治療法です。医療用の弾性ストッキングや弾性包帯などを使って圧迫していきます。
弾性着衣や弾性包帯をした状態で、ゆっくりと大きな筋肉を動かしてむくみを改善していきます。ただし、運動しすぎてしまうとむくみは悪化する可能性があります。
これらの治療で改善がみられない場合やリンパ浮腫の症状が進行してしまった場合は、リンパ浮腫組織切除術やリンパ誘導術などの手術が行われます。
いずれの治療法においても早い段階で始めた方が効果が上がりやすいといわれています。
リンパ浮腫には、牛車腎気丸などの漢方薬やループ系利尿薬などが用いられることがあります。しかし、現時点ではこれらの薬の効果は科学的に立証されておらず、効果も人によって大きく異なります。
このため、リンパ浮腫の治療は日常生活での予防やケアが主体となり、薬物療法が行われることはほとんどありません。
リンパ浮腫の人は、皮膚への刺激を避けるようにしましょう。ホットカーペットやカイロ、サウナなどを長時間当てすぎてしまうと低温やけどを起こす原因になります。また、締め付けのきつい衣服や下着、アクセサリー類も避けるようにしてください。
運動や仕事についても、負荷が大きくならないように注意が必要です。腕や脚がだるくなったり、筋肉痛が残ってしまう場合は、運動のレベルを下げましょう。仕事では、同じ姿勢を長時間続けないようにしてください。こまめに休憩を挟みながら、合間に関節を動かすようにしましょう。
リンパ浮腫は、早期に発見して適切な対処を継続することが大切です。このため、次のような初期症状がある場合には、内科などに早めに相談するようにしましょう。
これらの症状がみられた場合は、初期段階のリンパ浮腫のサインかも知れません。気になる人は定期的にセルフチェックをしてみましょう。
がん治療のあとに、腕や脚がむくんだり、だるくなったり、動かしにくくなった場合は、リンパ浮腫の可能性があります。リンパ浮腫は、早期に治療を始めたほうが回復しやすいといわれているので、変化に気づいた段階ですぐに病院へいきましょう。
【 厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】