記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
出産経験のある中高年以降の女性が、発症することの多い症状が「子宮脱」です。今回の記事では、その子宮脱のサインとなる症状や、効果的な予防法をお伝えしていきます。
人間の下腹部辺りには様々な臓器が詰まっています。そのような臓器を支えている筋肉のひとつが、骨盤底筋と呼ばれる筋肉群です。骨盤底筋は文字通り、骨盤の中にあり子宮や膀胱、直腸を包み込むようにして支えています。骨盤底筋がなければこれらの臓器は重力に従って下垂していく一方ですが、骨盤底筋は加齢や負荷がかかることで少しずつ衰えていきます。するとこうした臓器も下がっていってしまい、更にその程度が酷くなると本来、あるべき場所から逸脱してしまうこともあります。
子宮脱は、骨盤底筋の衰えにより子宮が本来あるべき場所、すなわち腟の中から外側へと飛び出してしまった状態の病気です。子宮の全てが飛び出してしまうこともありますし、一部のみで済むこともあります。更に子宮が下がる時に、他の臓器も合わせて下がってしまうことも少なくはなく、子宮の逸脱に合わせるようにして腟が裏返ってしまうこともあります。骨盤底筋に負荷がかかる出産を経験した女性で、かつその負荷による骨盤底筋のゆるみや筋力自体の低下が大きくなりやすい中高年以降の女性に多く見られる症状とされています。
子宮が下がってきている程度であれば目立った自覚症状はありません。ただし子宮の位置がずれることで尿道に影響が出てきて、排尿に対しての支障が出てくることが多くなります。これが子宮脱のサインとも言える症状のひとつです。たとえば尿の出が悪くなったり、反対に出が良くなり過ぎる、回数が多くなると言った症状が挙げられます。
また尿との関係で言えば、くしゃみをした際などに失禁してしまうことが多くなってきた場合には、骨盤底筋のゆるみが原因のひとつとして考えられます。加えて尿道への影響が重度化すると尿が出なくなってしまうこともあり、それにより腎臓疾患が引き起こされてしまう恐れもあるので要注意です。
ほかには、逸脱した子宮が外陰部や太ももを圧迫することがあります。それによる不快感や圧迫感を股の間に感じることも、子宮脱のサインのひとつだと言えます。
そもそも子宮脱が起きる原因としては、出産時などの力み、そして加齢などによる骨盤底筋のゆるみ、更に肥満による腹圧増加が挙げられます。ですからそれぞれに合った効果的な予防法をとるのが最適です。
まず出産方法です。日本には自然分娩が最も望ましいと言うような風潮が根強いですが、体に負荷のかからない方法も選択肢に入れることが、子宮脱の予防法のひとつになります。特に年齢を重ねた方の場合、骨盤底筋が弱っており、そこに負荷がかかる出産法を選択することが子宮脱につながるリスクもあるので注意が必要です。
次に骨盤底筋のゆるみに関しては、筋肉を鍛えることが有効です。骨盤底筋を鍛える方法は簡単で、最も行いやすいのは、お尻に力を入れて、お尻と腟を引き上げるような状態を数秒間維持する方法です。
最後の肥満ですが、対策としては食生活の改善や適度な運動習慣を持つようにすることが望ましいです。
子宮脱が起きる原因はある程度特定されているので、その原因を避けるよう工夫することで、発症を予防できる場合があります。中高年以降の女性は特に発症リスクが高いので、肥満対策や骨盤底筋の運動など、できることを始めていきましょう。