記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
デスクワークの増加やスマートフォンなどの登場によるライフスタイルの変化で、猫背は増加傾向にあるといわれています。世間では様々な猫背対策が紹介されていますが、猫背を解消するストレッチはあるのでしょうか。この記事では猫背の原因のひとつとされているインナーマッスルと、猫背を改善するための注意点の紹介をしています。
正しいとされる姿勢は、背骨が首からお尻にかけてゆるやかなS字を描いている状態です。猫背とは、背中のカーブが適切なカーブよりも湾曲を強めてしまっている状態を指します。
胸の辺りに位置している背骨はもともと後ろ側に少し湾曲していますが、猫背の人はこの湾曲が過剰であり、頭や肩が前方に突き出しているような状態になっています。
猫背になりやすいのは、日常的に長時間のデスクワークを行う人やスマホを長い時間よく使う人、椅子の座り方が悪い人、あぐらをかく機会が多い人といわれています。猫背は姿勢の悪さが目立つという見た目の問題だけでなく、さまざまな悪影響を全身に及ぼす可能性があると考えられています。
猫背になりやすくさせる大きな原因の一つに、インナーマッスルの筋力低下が挙げられることがあります。
インナーマッスルとは、身体の表面にある筋肉(アウターマッスル)ではなく、体内の深層部にある筋肉の総称です。表層の筋肉が何かを持ち上げたり瞬発的に速く動くときに主に使われるのに対し、インナーマッスルは主に姿勢を維持したり、関節を固定するなどの働きを担っています。つまり、姿勢をきれいに保つためには、インナーマッスルが正しく働き続けることが大切になってくるのです。
歩く機会が少なくなったり、家事を家電用品にまかせきりになってしまうと運動不足になりインナーマッスルも衰えがちになってしまいます。また、アウターマッスルはトレーニングの効果が出やすく鍛えやすい筋肉ですが、インナーマッスルを鍛えることは難しく、トレーニングの効果もでにくいといわれています。そのため、アウターマッスルの力を支えるだけの力をインナーマッスルが出せなくなってしまうことも多く、その結果姿勢のバランスも乱れがちになってしまいます。
姿勢のバランスが乱れると、理想的な背骨のS字ラインも乱れやすくなります。インナーマッスルの筋力低下だけが猫背の原因というわけではありませんが、デスクワークが多く体を動かす機会が少ない現代人にとっては無視できない原因といえるでしょう。
通常の筋トレなどでインナーマッスルを鍛えることは難しいですが、特別な器具を使わずに自宅でインナーマッスルを鍛えることは可能です。
・椅子に座ったままで太ももを上げる
・寝転んだ状態でひざを左右に動かす
・30秒間お腹に力を入れてからへこませる
上記の動作を、家事や仕事の合間を利用して毎日継続していくようにしましょう。
また、日頃から正しい姿勢を維持しようと意識するだけでも、インナーマッスルは刺激されます。気づいたときだけでもかまわないので、こまめに姿勢を正す努力をしてください。
インナーマッスルをある程度使えるようになったら、エクササイズボールなどを利用して本格的に鍛えてみることをおすすめします。
体は現状の状態を維持しようとする作用が働くので(恒常性:ホメオスタシス)、一度猫背のクセがついてしますと自分の意識だけではなかなか姿勢の改善ができません。また、インナーマッスルはトレーニングの効果がでにくいことも猫背の改善が難しい原因といえるでしょう。
そして、猫背の原因はインナーマッスルの筋力低下だけが原因ではありません。腰や首、背中など背骨(脊椎)に起因した整形外科疾患や、内臓の病気など、何らかの痛みや不調をかばった結果として猫背の姿勢になっている可能性があります。また、知らないうちに背骨が変形したり圧迫骨折を起こして猫背になってしまうこともあるのです。
なかなかよくならない猫背に悩んでいる場合は、はっきりとした不調を感じていなくても、まずは整形外科に相談してみることをおすすめします。整形外科で検査して、大きな問題がないとわかってから、医師や理学療法士に相談しながらトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか。
また、猫背改善のために整体やマッサージなどを利用する人もいるでしょうが、骨の変形や内臓の病気などが原因の猫背は整体やマッサージでは治せません。あくまでも筋肉の張りやコリ、疲労を解消することを目的とし、医師から許可を得てから病院の治療と並行して行うことをおすすめします。
猫背の原因のひとつは筋力の低下であることは間違いありませんが、その他にも様々な原因があります。猫背は身近な悩みであり、重篤な症状も伴わないため軽視されがちですが、何らかの病気が遠因になって猫背になってしまうこともあるのです。なかなか良くならない猫背や、痛みを伴う猫背は、何か大きな問題が潜んでいる可能性があります。健康チェックをかねて整形外科で検査してもらい、何も問題がないことを確認してからセルフケアを始めることをおすすめします。
また、体の状態によっては推奨できないトレーニングもあるので、持病がある人や痛みがある人は、必ず専門家に相談してからセルフケアを行うようにしましょう。