マルファン症候群の治療法を症状別に解説します

2018/5/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

国の難病に指定されている「マルファン症候群」。背骨の変形や近視、動脈解離などのさまざまな症状を引き起こしますが、これらの症状にはどのような治療を行っていくのでしょうか?

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マルファン症候群の代表的な症状とは?

マルファン症候群とは、全身の結合組織(体の組織を支えたり、力を伝達したりする組織)の働きが体質的に変化しているために、骨格や目、心血管・肺などに症状が現れる先天性の遺伝子疾患です。

個人差はありますが、部位ごとに以下のような症状が現れます。年齢を重ねるごとに症状が出てくることが多いです。

  • 骨格の症状:高身長、細く長い指、背骨が曲がる、胸の変形 など
  • 目の症状:重度の近視、水晶体のズレ など
  • 心臓血管の症状:動脈が瘤のように膨らむ、動脈解離 など

心臓・血管の症状の治療法について

動脈の膨らみや動脈解離が見られる場合は、動脈を人工血管に置き換える外科手術を行います。また、血液の逆流など心臓弁の機能低下が見られた場合は、牛や豚などの心膜・弁から作られた生体弁や機械弁に交換する手術が実施されます。

しかし、大動脈解離が起こってしまうと治療が困難になるので、動脈の膨らみが見られた段階で薬物療法を行うことが大切です。具体的には、β遮断薬やACE阻害薬などの血圧を下げる薬を処方し、動脈の変化を抑制していきます。

目の症状に対する治療法について

水晶体の異変や近視などで視力が低下した場合は、メガネやコンタクトレンズで矯正をします。しかし、目の症状や重症度によっては、手術が必要になります。

例えば、水晶体のズレが大きい場合には、水晶体の除去手術を行った上で、メガネやコンタクトなどで視力の補強をします。緑内障になった場合はまずは目薬で治療しますが、改善しない場合は手術を要します。また、網膜剥離の場合はすぐに手術を行います。

骨格・肺の症状の治療法について

骨格や肺の症状に対しての治療法は以下の通りです。

骨格の症状への治療法

側弯症などが起こった場合は、背骨が曲がっていかないように装具をつけたり、金属で固定する手術を行います。

また、漏斗胸(ろうときょう:胸骨やろっ骨が陥没し、漏斗のように窪む病変)のへこみの程度が大きい場合は、それを平らにする手術をすることがあります。股関節の痛みが強い場合には、人工関節にする手術を行う場合があります。

肺の症状への治療法

自然気胸などになった場合には、入院して空気を抜いたり、胸腔手術や開胸手術が必要になったりします。なお、肺を傷つけるので喫煙は控えてください。

おわりに:症状や重症度に応じて、手術や投薬など治療法はさまざま

心臓や血管、骨格、肺など、マルファン症候群の引き起こす症状は多岐にわたります。症状は重症度に応じて処置は異なっていくので、主治医の指示を仰ぎましょう。また、症状を進行させないよう、服薬をしっかり行う、禁煙するといったことを徹底することも重要です。

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