口唇口蓋裂は時間がかかっても治る:治療に対する心構えとは?

2018/1/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

くちびるや歯ぐきなどがつながらない状態で生まれてくる「口唇口蓋裂」。今回の記事では、口唇口蓋裂の赤ちゃんを持つ保護者の方に向けて、治療において大切な心構えなどをお伝えしていきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

口唇口蓋裂とは?

くちびるや歯ぐきなどは胎児の時期に左右別々に組織ができて、生まれてくる前に左右の組織がつながってから生まれてきます。しかしなんらかの原因で左右の組織がうまくつながらないことがあり、左右の組織が離れた状態で生まれてくるのが口唇口蓋裂です。今では胎児の状態の時にエコー検査で口唇口蓋裂があることが発見できることもあります。

裂け目ができている部位はくちびる、口の中の天井部分、歯ぐきなどで、どこかひとつだけのこともあれば、数か所の場所で裂け目があることもあります。口に裂け目があることで鼻のあたりにも影響を与え、言葉を話すことや食事をとることに問題が生じることがあります。また歯ぐきに裂け目がある時には、歯が生える土台に裂け目ができるために歯並びの問題がでることがあります。他には機能的な面だけでなく、顔の一部に裂け目があることで見た目の問題も出てきます。

口唇口蓋裂を引き起こす合併症について

口唇口蓋裂は特定の病気の症状の一部として発症することがあります。

具体的には、指の数が通常とは異なる病気である合指症や多指症、心臓の病気である心室中隔欠損症やファロー四徴症などを併発して産まれてくることがあります。また、通常よりも早い時期に頭の骨がつながってしまうことで、成長する時に頭の骨が大きくなることが難しくなる頭蓋骨早期癒合症が原因で引き起こされることもあります。ほかにも、ピエール・ロバン症候群、ダウン症候群などの病気の一部の症状としてあらわれることがあります。

口唇口蓋裂は長い目で見て治療することが大切

 

口唇口蓋裂の治療では、様々な専門分野のスタッフが協力して取り組んでいくことが重要です。この病気は一度の手術を行ってすぐに治癒するものではなく、形成外科で外観上の手術を行った後に、話し方の練習をしたり、歯並びの問題を修正したりする必要が出てくる場合が多いです。その時にはリハビリテーション科や歯科と連携をとって治療を進めていくことが重要です。さらに口唇口蓋裂は中耳炎を起こしやすいという特徴があるため、耳鼻科との連携も必要です。

このように、治療に関しては産科や小児科だけでなく他の科とも深いかかわりが出てきます。そして治療には時間がかかるので、すぐに治したいと思っていてもある程度の時間がかかることは頭に入れておいた方がよいでしょう。口唇口蓋裂の治療は今では技術が進歩しているので、時間をかけて丁寧に行えば、後遺症もほとんど残らずに通常の人と同じように生活していけます。口唇口蓋裂は長い目で見て治療することが大切です。

おわりに:手術や手術後の流れもふまえ、長期的な治療を

口唇口蓋裂は何らかの疾患の一部として発症することがあり、その場合は口唇口蓋裂の治療だけでなく原因疾患の治療も必要になります。また、手術後は発音の訓練や歯列矯正が必要になったりと、治癒までの道のりも長いです。こうした流れをしっかりふまえた上で、長期的に治療を続けていきましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

関連記事

この記事に含まれるキーワード

中耳炎(26) ダウン症(14) リハビリ(52) 口唇口蓋裂(6) 合指症(1) 多指症(1) 頭蓋骨早期癒合症(1) 歯並び(3)