もやもや病の手術後に起こる可能性のある合併症とは

2018/5/8

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

国の難病に指定されている「もやもや病」は、手術治療が必要なケースが少なくありません。しかしそこで気になるのが、手術後の合併症の可能性です。今回の記事では、もやもや病の手術で起こる可能性のある合併症や、手術の必要性などについて解説します。

もやもや病はどんな病気?

もやもや病とは、内頚動脈という脳血管の終末部が細くなり、脳が血液不足に陥ったことで、一時的な手足の麻痺、言語障害を起こす病気です。この血流不足を補うために拡張した脳内の細い血管がもやもやと見えることからこの名がつけられました。これらの細い血管は「ウィリス動脈輪」という環状の血管群を形成することから、もやもや病は「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれます。

また、このもやもや血管は、太さ以上に拡張して血液を送ろうとするために切れやすく、切れた場合は脳出血を引き起こす恐れがあります。

代表的な2つの手術法とは?

もやもや病の治療法には、薬物治療などの内科療法、外科手術があります。比較的軽度の場合には、発作の誘引を防ぐ(ピアニカの演奏や、泣きわめくのを防ぐなど)、抗血小板薬の内服といった内科療法によって症状を抑制できますが、もやもや血管が急速に発達しているなど危険性の高い場合は外科手術が必要になります。

行われる外科手術とは、「血行再建術」と呼ばれるものです。少なくなっている脳血流を手術で増やす、開頭手術になります。なお、手術の方法としては「直接法」と「間接法」の2種類があります。

直接法

頭の皮膚に栄養を送る「浅側頭動脈」と呼ばれる動脈と、脳の表面の動脈とを直接つなぐことにより改善を目指すバイパス手術です。浅側頭動脈を傷つけないように皮膚切開した後、骨を外し、脳表面にある中大脳動脈の枝を露出させてからこの血管と浅側頭動脈をつないでいきます。

間接法

間接法では、直接血管をつなぐバイパス手術は行いません。頭の皮膚に栄養を送る血管や側頭部の筋肉、頭蓋骨の骨膜などを脳の表面に置く手術となります。もやもや病の患者さんの脳は酸素が不足しているのですが、脳の表面に筋肉や血管を置くことで血管を新たに形成させ、血液と酸素が供給されるようにします。

手術によって引き起こされる可能性のある症状について

もやもや病の手術には、一例として、以下のような合併症のリスクがあります。

脳梗塞

もやもや病の患者さんはすでに脳の血流が低下しているため、ほかの開頭術と比べて術後の脳梗塞の再発率が高いと言われています。また血液の中には炭酸ガスが溶け込んでおり、動脈血の中の炭酸ガス濃度が低下すると脳血管が収縮することで脳血流も低下します。手術中は炭酸ガス濃度が正常範囲内になるよう厳重な管理が行われますが、特にもやもや病の方は、炭酸ガス濃度の低下に過敏な反応をしやすいため、脳梗塞の発症リスクが高くなります。

頭蓋内出血

手術では頭皮などの組織を切開するため、その部位から出血が起こります。手術では頭蓋内の止血は完全に行いますが、稀に手術中や術後に頭蓋内出血が起こるケースがあります。またこれにより、運動麻痺や言語障害などが出現する可能性があります。

細菌性髄膜炎や脳腫瘍

手術は無菌状態で行いますが、開頭手術により脳や皮下組織が露出された際、微生物が侵入することがあります。このため術中や術後は抗生物質を投与しますが、患者さんの抵抗力が弱かったり、抗生物質がうまく効かなかったりすると、細菌性髄膜炎や脳膿瘍、皮下膿瘍などの感染性合併症が引き起こされる場合があります。

もやもや病の治療で手術が行われる理由

もやもや病の手術の目的は、病気の根治というよりも、脳虚血や脳梗塞の進展を防止あるいは進行を少しでも遅らせることにあります。もやもや病は根治が難しく、再発のリスクもあるため手術後も経過を観察する必要がありますが、10年や20年という長期的なスパンで考えてみた場合には、脳の動脈にバイパスをつくって、脳からの虚血・出血が起こる可能性を下げることが重要と考えられます。

おわりに:将来的に起こる可能性のある脳出血などを予防する意味でも、手術は重要

もやもや病の手術は開頭手術のため、頭蓋内出血や脳梗塞などの合併症のリスクはゼロではありません。しかし、放置していると脳出血を起こす恐れがあるので、未然に防ぐためには手術を行った方が良いという考えが一般的です。まずは手術のリスクやメリットについて、ご家族や主治医としっかり話し合いましょう。

難病情報センター の情報をもとに編集して作成 】

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