大人の学習障害に気づくきっかけは?負担の少ない仕事の選び方って?

2017/12/26 記事改定日: 2020/10/12
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

学習障害とは、文章の読み書きや計算などの能力の一部に支障が出る障害です。子どものときから支障が出ていても、見過ごされたために適切な支援や対処を受けられずに、そのまま大人に成長する人も少なくありません。この記事では、大人の学習障害について解説しています。

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算数や国語で困難発生?学習障害はどんな症状があるの?

学習障害とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力の一部に支障をきたすことです。

  1. 読むことが困難な読字障害
  2. 書くことが困難な書字表出障害
  3. 算数や推論が困難な算数障害

学習障害は上記の3種類に分けることができます。
「読む能力はあっても書くことができない」などある特定の分野に偏りが見られるのが特徴です。1つの科目だけが理解できないなどの症状も現れますが、知的発達に大きな遅れがあるわけではありません。

知的障害がないため、周囲からは「変わった人」や「能力の低い人」などというレッテルを貼られてしまうこともあります。学習障害は日常生活に大きな支障をきたす可能性がありますが、適切な治療や対策を行うことで、長らく悩んでいた「生きづらさ」から解放されることも十分にありえます。

大人の学習障害の特徴とは?職場で起こりがちなトラブルって?

子供の学習障害は、学校の勉強についていけなくなるなどの問題を抱えることになり、学習障害の子供が成人して大人として働き出すようになると、仕事でミスを頻発するなどのトラブルが原因で、業務をうまく進められなくなることがあります。

大人の学習障害の問題
  • 仕事でミスをすることが多い
  • マニュアルを読んでも理解できない
  • 指示の理解ができないことがある
  • メモを取るのが苦手で教えてもらった仕事をうまくできない
  • 学習障害のある分野に関連する作業だけがうまく進まない など

学習障害の人は一部の能力に問題が起こる特徴があるため、他の作業はほとんど問題なくできる傾向があります。そのため、同僚や上司からの理解を得ることが難しく、精神的にも追い込まれてしまうようになります。

大人になってから学習障害だと気づくきっかけ

学習障害の症状の出方には個人差があるため、はっきりした学習障害の特徴が現れなかったり、学習障害について理解が乏しい場合は、担任の教師や両親も見過ごしてしまう可能性があります。勉強が苦手なだけと勘違いされてしまい、大人になるまで必要な支援を受けることができずに過ごしてきたという人も少なくないかもしれません。

マニュアルを読んでも作業の手順が理解できなかったり、情報の抜けや漏れが多かったり、黙読できなかったり、音読がスムーズにできないなどの特徴がある人は、学習障害が隠れている可能性があります。

また、メモを取るのが苦手だったり、言われたことをその場で理解できないなどの特徴も、学習障害の症状のひとつとして現れている可能性があります。
職場にこのような人がいる場合や、自分自身がこのようなことで悩んでいるのならば、一度専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。

大人の学習障害セルフチェック!仕事選びのポイントって?

次の項目多くあてはまる場合には学習障害の可能性がありますので、思い当たる場合は適切な医療機関を受診して相談してみましょう。

  • 会議中や業務中にメモを取ることができない
  • 金銭管理ができない
  • 同じ失敗を繰り返し、周囲から批判されることがある
  • 文章の「てにをは」のミスを指摘されることが多い
  • 集団生活の中で他者と円滑にコミュニケーションがとれない
  • 重要連絡事項の読み落としなど、ミスすることが多い
  • マニュアルや説明書を読んでも理解できない

仕事・職場選びのポイント

自分が任された業務をきちんと行うことができれば、仕事については特に問題はないといえるでしょう。無理に苦手な分野に手をつける必要はなく、苦手が作業がない担当業務や職場を選ぶようにしてください。

また、学習障害の人が仕事する場合は、作業の一部で他の人とは異なる手順が必要になることもあります。それらに対して適切な対応を取ってもらえるか、前向きに対応してもらえるような体制が整っている職場を選ぶことも重要です。

大人の学習障害で利用できる支援サービス

学習障害を持つ大人が、医療や生活、就労に関する支援を受けられる公的なサービスがいくつかあります。
ご自身に合ったものをうまく利用することで、より「生きやすい」生活を目指しましょう。

障害者支援センター

医療や福祉、労働などといった患者を取り巻く生活全般を様々な機関と連携して円滑に行えるように支援する機関です。家族の相談にも応じることができ、困ったことを相談するとよいアドバイスや関係機関との連携を取って解決に導いてくれるでしょう。

ハローワーク

ハローワークには障害者向けの就職を紹介するサービスがあり、無理のない仕事を選ぶことができます。

障害者就職支援センター

障害者が就業をして生活を営んでいけるように、専門の講師を招いての職業訓練や、就職後の集団生活の訓練などを行う機関です。また、習得した職業技能を生かした就職先を紹介してくれることもあります。

学習障害とソーシャルスキルトレーニング(SST)

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、職場などに於いて社会の一員として周囲の人と円滑な関係を築きながら過ごすスキルを身に付けるための訓練のことです。人との関わり方だけでなく、身だしなみを整える・時間を遵守するといった基本的なマナーに関することも訓練に含まれます。

具体的には、社会生活を送る上で学習障害の方が困難になりがちな部分について重点的にロールプレイなどを行いながら話し合いを重ねることで自身の問題点への気づきを促したり、医師や臨床心理士などとカウンセリングを行うことで自己の省みを行うなど様々な訓練が行われます。

おわりに:学習障害の人は自身の苦手分野を把握し、理解ある職場や支援を探すようにしよう

学習障害は一部の能力に問題が起こる障害であり、その他の能力には支障がありません。そのため、苦手な分野がないような職場であれば他の人と同じように仕事をすることができます。ただし、場合によっては特別な作業工程が必要になる場合もあるので、このような特別な対応ができる体制が整っている、支援サービスを利用しながら大人の学習障害に理解がある職場を選ぶようにしましょう。

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学習障害(15) うつ病(70) 社会不安障害(3) 読字障害(3) 書字表出障害(3)