記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
リンパ浮腫とは、リンパ管に水分(リンパ)が溜まっている状態であり、いわゆる「むくみ」のことです。
疲れや姿勢などが原因で一時的にむくむ分には問題ないですが、慢性的にむくんだ状態が続いていたり、むくみで関節の動きに制限がかかっている場合は治療が必要になることがあります。この記事ではリンパ浮腫の症状や予防法について解説しています。
体の中にはリンパという液体がリンパ管の中を流れています。リンパ管は動脈や静脈のように大きなリンパ管から細いリンパ管が枝分かれして体中に広がっています。
リンパ管の間にはリンパ節という豆のような形をした器官があります。リンパ節は首の付け根、脇の下、足の付け根に多く分布し、感染やがんが全身に広がらないような働きを担っています。リンパ液はリンパ管の中を緩やかに巡って全身を回りながら、リンパ液の中に含まれるたんぱく質や白血球を運んでいます。
リンパ液の流れが悪くなり、リンパ管に過剰にリンパ液が貯まってしまう状態のことをリンパ浮腫といいます。リンパ浮腫は、いわゆる「むくみ」のことであり、様々な原因で起こる症状です。
リンパ浮腫はむくみを生じますが、一般的に広く使われる普通の「むくみ」とは異なります。
リンパ浮腫はリンパ液の流れが悪くなって、うっ滞することが原因でむくみが生じますが、一般的なむくみは運動不足や心臓や腎臓、肺などに異常があって静脈が下腿から心臓へ戻ることができなくなって生じたり、水分や塩分の摂りすぎによって体内に余分な水分が増えることで発症します。
また、リンパ浮腫は脚や腕に生じやすいですが、一般的なむくみは全身に生じることが多く、むくみも軽度です。一方、リンパ浮腫は重度になると皮膚が大きく腫れあがり、うっ血を生じることも少なくありません。
リンパ浮腫は発症する原因によって大きく二つに分けることができます。
一次性リンパ浮腫は、2~3歳までに発症する先天性ものと、35歳前後で発症するものがあり、原因がわからないリンパ浮腫です。二次性リンパ浮腫に比べて圧倒的に発症数が少ないといわれています。
二次性リンパ浮腫のもはがんの手術などでリンパ節を切除したり、放射線療法の後にリンパ節が破壊されることで起こります。乳がんや子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、喉頭がんなどはリンパ節に影響する治療が行われることが多く、治療の後すぐに症状が出ることもあれば、何年かしてから発症することもあります。
リンパ浮腫は早期の段階ではむくみの程度が小さく、症状を自覚しにくいケースが多いといわれています。
リンパ液は皮膚のすぐ下にあるためリンパ液が貯まりむくんでくると、皮膚が厚くなったように感じたり血管が見えにくくなります。また、皮膚をつまんだときに、普段よりもしわがよりにくくなることも特徴です。
軽度~中期になると腕や足が以前と比べて太くなり、だるい、重い、疲れやすいといった症状がでます。むくみがある部位を指で押すと、もとに戻るスピードがおそく、へこんだままになることもあります。リンパ浮腫が重症化してくると皮膚が乾燥しやすく硬くなったり、毛深くなったりします。また、関節が曲がりにくいという症状がでたり、動かした時に違和感がでて動かしにくいと感じることもあるといわれています。
重症なリンパ浮腫では、ひっかき傷などの非常に小さな傷が皮膚にできるだけでそこから細菌感染を生じ、皮下の組織に炎症が広がることがあります。これを蜂窩織炎といい、脚や腕にできやすく、その部位全体が大きく腫れあがり、熱感や痛みを伴います。
また、38度以上の高熱が現れることもあり、早期に適切な処置を行わなければ、敗血症などの重篤な状態に移行してしまうことがあるので注意が必要です。
治療は抗生物質の投与が行われますが、多くは入院治療を要し、点滴による治療が行われます。また、皮膚の腫れがひどく、高度に緊満している状態の場合は、皮膚の一部を切開して緊満を開放する減張切開療法が行われることもあります。
リンパ浮腫の治療は基本的には、乾燥予防などのスキンケア、リンパドレナージマッサージなどの「日常的なケア」が必要になります。下肢に浮腫がある場合には、弾性ストッキングなどを使用した圧迫療法や圧迫した状態で運動を行うことで症状が改善することがありますが、人によって効果は異なります。
リンパ浮腫を根本的に治す方法は確立されておらず、日常のケアで症状が悪化しないように注意することが大切です。
リンパ浮腫の予防にはむくみが出ているかどうかを早く発見し、対策をとること大切です。普段からむくみがないかをマメにチェックして、むくみを発見したときは早めに医師に相談しましょう。
リンパ浮腫は皮膚の感染が原因で起こることもあるので、皮膚の清潔を保ち適切なスキンケアをして皮膚を守ることで予防できることもあります。また感染を防ぐために、なるべく皮膚を傷つけないようにすることも重要です。
他には体重の増加に気をつけてバランスの良い食事をとることも予防につながるといわれています。体を締めつけるものはむくみの原因となるので、締め付けの強い衣類や下着は避けるようにしましょう。
リンパ浮腫とはむくみのことであり、原因不明の一次性のものと、がんの治療が原因で起こる二次性のものがあります。重症化をさけるためには、早期に対処できるように普段から「むくみチェック」をするようにしましょう。また、バランスのよい食事を摂ったり、締め付けの強い衣服をさけるなど、日常生活の過ごし方にも注意するようにしてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
【 厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】