重症筋無力症が悪化すると起こる「クリーゼ」とは?

2018/1/10

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

重症筋無力症とは、何らかの原因で筋肉と神経のつなぎ目にある受容体が壊れ、信号を正しく受け取ることができなくなることで筋肉が動かなくなくなる難病です。症状が悪化すると、呼吸筋が麻痺して「クリーゼ」に発展します。この記事では重症筋無力症によって起こるクリーゼについて解説しています。

重症筋無力症について

重症筋無力症は、末梢神経と筋肉の接ぎ目において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊されることで発症する自己免疫疾患です。全身の筋力低下、疲れやすさが現れ、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です(眼の症状だけの場合は眼筋型とよび全体の20%を占めます。全身の症状があるものを全身型とよびます)。嚥下困難を伴うこともあります。

患者の男女比は1:1.7とされ、女性に多いのが特徴です。発症年齢は5歳未満に一つのピークがあり、その後女性では30代から50代にかけて、男性では50代から60代に発症のピークがあります。

クリーゼはどんな症状なの?

クリーゼとは、全身の筋肉が急激に麻痺し、特に呼吸筋麻痺のため呼吸困難に陥る症状です。人工呼吸器による呼吸管理が必要となる場合もあり、呼吸不全のほか、チアノーゼ、誤嚥、構音障害、唾液・喀痰排出困難、全身骨格の脱力などが出現することもあります。

また後述するコリン作動性クリーゼの場合は、呼吸不全に加えて、顔面蒼白、発汗、不穏、嘔吐、下痢尿意頻回などの症状も現れます。

重症筋無力症の患者が経過中にクリーゼを経験する症例は11~15%とされ、診断確定2年以内に生じやすく、高齢者や若年女性、嚥下障害を有する患者、胸腺腫合併例で多発するといわれています。

クリーゼを引き起こす原因は?

クリーゼには、病気自体が悪化したときに起こる「筋無力性クリーゼ」と、治療に用いられる抗コリンエステラーゼ剤の過剰服用でおこる「コリン作動性クリーゼ」があります。

「筋無力症クリーゼ」の原因としては、感染症(特に上気道・呼吸器感染症)が多く、妊娠・出産などのほか疲労やストレスも一因となります。その他、症状の悪化やコントロール不良、胸腺摘除の手術後、なども原因と考えられています。

一方、「コリン作動性クリーゼ」は、ピリドスチグミンやアンベノニウムといった抗コリンエステラーゼ剤の過剰摂取が原因となります。

クリーゼの予防や対処法、治療法について

クリーゼになってしまうと生命の危険があるため気管挿管と人工呼吸器管理を行ったあと、血液浄化療法を行う必要があります。ただし、適切なタイミングで適切な対処をすれば十分に間に合うので、患者と家族は、日ごろから気道確保などの対処法を学び、救急車を呼ぶ準備もしておきましょう。

もちろん、クリーゼにならないようにすることと、クリーゼになる前の段階で病院を受診することも重要になってきます。抗コリンエステラーゼ剤の服薬は医師の指示に従い用量用法を守り、日ごろから睡眠をよくとり、無理のない規則的な生活を心がけて予防に努めましょう。そして体調に変化を感じたら、悪化しないうちに早めに病院へ行くようにしてください。

おわりに:クリーゼの正しい対処法と予防法をきちんと把握しておこう

クリーゼは、人工呼吸器による呼吸管理を要する、重症筋無力症の重篤な症状の1つです。
薬品の過剰摂取など発症には原因があることから、理解したうえで予防に努めましょう。対処法も学んでおき、いざという場合に落ち着いて行動できるようにしましょう。

難病情報センター の情報をもとに編集して作成 】

この記事に含まれるキーワード

重症筋無力症(5) コリン作動性クリーゼ(2) クリーゼ(2) 筋無力性クリーゼ(1) 人工呼吸器(1) 抗コリンエステラーゼ剤(1) ピリドスチグミン(1) アンベノニウム(1)