記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/10 記事改定日: 2019/5/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ムコ多糖症とはライソゾーム症の一種であり、ムコ多糖を分解する酵素が生まれつき備わっていないことで発症する難病です。臓器や骨、関節などに障害が起こり様々な症状が現れます。
この記事では、ムコ多糖症の治療方法と検査・診断について解説していきます。
ムコ多糖症とは、遺伝子の異常によって体内のムコ多糖を分解する酵素がないことで、ムコ多糖が全身に蓄積してさまざまな障害を引き起こす遺伝性の病気です。
ムコ多糖が蓄積するほど症状は進行し、さまざまな臓器に障害を起こしながら、徐々に衰弱していきます。
よく見られる症状は
などです。
これらの症状は、赤ちゃんの頃は目立たないのですが、3~5歳頃になるとはっきりと現れてきます。
進行して重症化した場合、10代になると、歩けなくなる、自分で食事ができなくなる、自発呼吸が困難になるなどの状態に陥ることもあり、寿命も10歳から15歳程度になることが多いといわれています。
症状が軽度(低身長や心雑音のみ)の場合は、大人になるまで発見されないこともあります。
ムコ多糖症にはいくつかのタイプがあり、重症度や現れる症状は大きく異なります。生まれて間もなくの頃から重度な症状が現れたり、特徴的な顔貌などで早期に発見されるケースも多いですが、中には目立った症状が現れないため発見が遅れるケースもあります。
ムコ多糖症は早期に発見して、治療を進めていくことが重要です。お子さんに次のような症状が見られる場合には、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。
ムコ多糖症を診断する検査には、尿のムコ多糖量測定、酵素活性測定、遺伝子検査などがあります。ムコ多糖症をが疑われる症状が認められる場合には症状をよく確認した上で、各種検査を行います。
尿のムコ多糖量測定では、尿に異常なムコ多糖(デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)が多量に認められた場合にムコ多糖症と診断されます。異常なムコ多糖の種類によって、7つの病型(I型〜VII型)に分かれます。
数年前まで、ムコ多糖症の治療は骨髄移植しか方法がありませんでしたが、現在では酵素補充療法という方法も開発されました。治療方針としては、まずムコ多糖症の合併症の検査を行い、すでに現れている症状に対しては薬の内服や手術などによる治療を行います。
ムコ多糖症のI型、II型、IV型、VI型に対しては酵素補充療法を行い、体の中に足りない酵素製剤を点滴注射により毎週投与することで、不足している酵素を補充します。この治療により、呼吸状態の改善、お腹の膨れの正常化、固い皮膚・関節症状の改善などの効果が期待できます。
しかし、この治療法は骨の変形や脳への治療効果は芳しくありません。将来的には脳室内に直接、酵素製剤を補充する方法が考えられています。
酵素補充療法は比較的安全なものですが、発熱、蕁麻疹などのアレルギー反応が見られることがあります。また病気の型、年齢、重症度などによって、骨髄移植が有効となる場合もあります。
ムコ多糖症は、50,000人の新生児に1人という確率で発生するまれな小児難病です。進行性の病気のため、病状が後戻りすることはありません。そのため早期発見・早期治療が非常に重要となってきます。
生まれてすぐの頃は外見上まったく正常に見えるため、早期の診断は簡単なことではありませんが、関節が固い、骨や関節が変形するといった症状を少しでも感じた場合は、ただちに医療機関を受診してください。