ファブリー病の症状にはどんな特徴があるの?

2018/1/11

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

ファブリー病は男性に起こりやすいライソゾーム病の1種である遺伝病です。一部の酵素が作られなくなってしまうことで体に不要な糖脂質が溜まってしまい、様々な症状が現れます。
この記事ではファブリー病の症状について解説していきます。

ファブリー病はどんな病気?

ファブリー病は、生まれつき代謝に異常が生じる症状で、厚生労働省が難病(特定疾患)に指定しています。
人体にとって要らなくなった物質は酵素によって分解されますが、ファブリー病はある酵素が欠損しているために分解されなくなり、体内に蓄積されることで様々な症状を引き起こす病気です。

ファブリー病の患者は遺伝子の一部の異常が原因で「α-ガラクトシダーゼ」という酵素が先天的に少なく、「GL-3」という糖脂質を十分に分解できない体質になります。
この「GL-3」が、時間をかけて全身の細胞に溜まっていき、徐々に細胞へダメージが及んでくるのです。

ファブリー病の種類

ファブリー病は小児期に強い症状で発症するタイプや、逆に成人になってから少しずつ症状が出現するタイプなど様々なバラエティを持つ疾患です。それはなぜかというと、ファブリー病の原因遺伝子の振る舞いが男性と女性で異なるためです。

ファブリー病の原因となる遺伝子はX染色体の中に存在しており、両親から受け継いだX染色体のいずれかに異常があるためにファブリー病を発症することになります(両方の異常があることもありますが、とても珍しいためここでは例外とします)。X染色体の体内での振る舞いがファブリー病のバラエティの原因となるのです。

X染色体は男性では一本(母親から受け継ぎます)、女性では二本存在します。男性ではこの一本のX染色体にある遺伝子に変異があれば発病するため、考え方はシンプルですが、女性の場合は少し複雑です。

女性は二本のX染色体を持ちますが、このままだと男性に比べてX染色体の働きが2倍になってしまいますので、女性の細胞の中ではどちらかのX染色体を不活性化してすることになります。

ところが、女性の体細胞においてどちらのX染色体が活性化するのかは、受精卵が成長する過程でランダムに選ばれます。全ての細胞で均一にどちらかのX染色体がおとなしくなるわけではないのです。

ですので、ファブリー病の原因となる遺伝子変異を持つX染色体と、遺伝子変異を持たないX染色体のどちらが活性化するのかもそれぞれの細胞でランダムに決まるため、結果として体が出来上がった時には、変異を持つ細胞と持たない細胞がまだらに入り混じっているわけです。

したがって、ある女性の体の中でファブリー病の原因遺伝子変異を持つ細胞がどれくらいの割合いるのかによって、その女性の症状の強さや、どの時期に発症するか、など様々なバラエティが出現します。

平均すると、女性の方がファブリー病の症状が現れるのは少し遅いです。また、症状が多様であるため見逃されやすく、診断までの時間が長くかかることが多いとされます。

このように、ファブリー病は男女で分けて考えるのが大切です。

男性の場合

母親から受け継ぐ1本のX染色体に遺伝子変異があることで発病し、これをヘミ接合体と呼びます。簡単に表現すると「ヘミ」とは、本来1対2つあるはずの遺伝子が1本(=母親由来の1つ)しかなく、その遺伝子に遺伝子変異がある、という意味です。そのうち典型的なファブリー病の症状を発現するものを古典型とよび、そうではなく心臓や腎臓など特定の臓器に限った症状を発現するものを亜型と呼びます。

女性の場合

上述した通り変異のあるX染色体がどれくらいの割合で混ざっているかによって症状にグラデーションがありますが、何らかの症状を持つ女性のファブリー病をヘテロ接合体と呼びます。ヘテロ接合とは正常な遺伝子と変異遺伝子の2つが対になっているという意味です。

ファブリー病の症状

ファブリー病は異常なGL-3が様々な細胞に沈着することによって症状を起こしますが、どのような細胞に沈着するか、どのような疾患の型かによって様々です。

小児期の症状

ファブリー病のうち小児期に発症したものは四肢疼痛や低汗症などを呈します。小児期においては、強い手足の痛みが一番の診断の手がかりになりますが、見落とされることが多いです。このような症状がある場合はファブリー病を疑って検査することで早期診断につながります。また小児では次の角膜混濁にも注意しましょう。

角膜混濁

子供のファブリー病の特徴の一つです。男性では4歳頃までに、女性では10歳頃までには角膜混濁が生じていると報告されています。小児患者では男女ともに27%に認められます。

神経症状

神経細胞にGL-3が蓄積することによって様々な症状が出現して、末梢神経障害・自律神経障害、脳血管障害に分類されます。末梢神経障害によっておこる疼痛発作、手足の感覚異常、自律神経障害による発汗障害があります。また、脳血管障害は、成人期のファブリー病患者に生じやすく、脳梗塞はファブリー病の死亡の直接原因となり得ます。

腎症状

腎症状はファブリー病患者において高頻度に発現する症状の1つです。異常なGL-3が腎臓に沈着することによって蛋白尿や高血圧などを起こします。

難聴、めまい、耳鳴り

何らしらの聴力異常は、男性(=へミ接合体)の約40~55% 、女性(=ヘテロ接合体)の約23%程度と報告されています。難聴が多いとされています。また、耳鳴りに関しては上述の中枢神経症状である可能性もあります。

皮膚

被角血管腫および発汗障害ファブリー病で最もよく知られている皮膚症状の一つです。子供の頃から発生し、次第にその数および大きさが増大します。

心臓病変

心肥大はファブリー病の代表的な症状の一つです。心筋細胞などの心臓を構成する細胞にGL-3が蓄積することで発症します。また、不整脈にも注意が必要です。

消化器

典型的には12歳前後からあらわれ、男性の35%、女性の25%に見られるとされます。30~50代では多くの患者で主要症状の一つとなります。症状は腹痛、下痢、嘔吐などで、患者QOLに影響を及ぼします

ファブリー病の受診のタイミング

ファブリー病は早期に発見して、できるだけ早い段階から治療を進めていくことが大切です。
ファブリー病は非常にマイナーな病気であり、何らかの症状があっても見過ごされているケースも多々あります。次のような症状に多く該当する場合は、放っておかずにかかりつけの医師などに相談するようにしましょう。

  • 動悸や息切れ
  • 前胸部の痛み
  • 手足の痛み
  • 難聴
  • 物がぼやけて見える
  • 手指先端の赤いできもの
  • 汗をかきにくい
  • 繰り返す下痢や便秘、嘔吐

特に、小児期には手指先端の赤いできものや手足の痛みを生じやすいのが特徴です。思い当たる外傷や過度な運動歴などがないにも関わらずこれらの症状が見られる場合には特に注意が必要です。

ファブリー病の治療法は?

ファブリー病は、症状が全身に生じ、多岐にわたるため、それぞれの症状に応じて対症的に治療を行っていきます。
一方で、体内に足りないα-ガラクトシダーゼを医療的に補うことでファブリー病の進行を抑制する「酵素補充療法」を行う場合もあります。

酵素補充療法では、α-ガラクトシダーゼが含まれる製剤を点滴によって体内へ注入します。すると、必然的に身体中の細胞に溜まった「GL-3」が分解されていきますので、対症療法に頼らなくても症状が総合的に軽くなることが期待できるのです。

男性(ヘミ接合体)の場合、ファブリー病の症状が一つでも出現したら治療を開始すべきと考えられています。通常は男性の場合、初発症状は子供の頃の四肢疼痛であることが多いため、およそこの時期が酵素補充療法を開始するのが良い可能性があります。

女性(ヘテロ接合体)の場合、現在のところ開始時期は明確ではありません。しかし、明らかな臓器障害を認める場合は酵素補充療法を開始すべきと考えられています。患者本人が希望する場合は、より早期に開始しても問題はありません。

ただし、酵素補充療法には、発熱や発疹、悪寒、鼻水などの副作用があることがわかっています。副作用が重い場合は、点滴の速度を遅くしたり事前に抗ヒスタミン剤や解熱剤などを投与することがあります。

おわりに:周囲の人の協力を仰ぎ、気長に治療を続けていくことが大切

ファブリー病は全身に症状が現れるため非常につらい環境に陥りやすい病気です。しかし、有効な治療法も確立されつつあるため、身近な方の理解と協力のもと治療を続けることである程度生活の質を高めることができるとされています。医師と相談しながら症状や状況にあった治療を行い、根気よく治療を続けていきましょう。

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