記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
空気嚥下症とは呑気症とも呼ばれ、げっぷやおならが多くなり、腹部膨満感が現れることです。病気が原因のこともありますが、ストレスによる噛みしめが原因とする説もあるといわれています。この記事では、空気嚥下症の原因について解説していきます。
空気嚥下症は、唾液とともに空気を無意識に飲み込むことにより、多量の空気が胃に溜まり、げっぷや腹部膨満感が現れるようになった状態です。ストレスなど精神的な理由によることが多く、「呑気症」と呼ばれることもあります。
通常の約3倍程度の多量の空気を嚥下してしまうことによって起こると考えられていて、胃にたまった空気が逆流してゲップとして口から出てきたり、小腸を通り大腸にたまったものがガス(おなら)として出てくるようになるのです。
さらに、無意識の噛みしめ動作による緊張が首や肩にも波及し、肩こり、側頭部痛、頭痛、腕のしびれなどをもたらすことがあり、これを「噛みしめ呑気症候群」と呼びます。
統計によれば、現在、空気嚥下症で悩んでいる人は全国に500万人近く(8人に1人の割合)に及ぶとされ、20代から50代のストレスを受けやすい女性に多いといわれます。
人は唾液を1回飲み込む時に、同時に2~4mlの空気も一緒に飲み込みます。緊張したり不安になったりすると唾液を呑み込みますが、ストレス状態が慢性化すると、無意識のうちに唾液と共に呑み込む空気の量が多くなり、胃や腸にたまり、ゲップやガスなどの症状が出やすくなります。
このゲップは胃液や食べた物の逆流を引き起こし、逆流性食道炎をもたらすことがあります。これらの症状が更なるストレスとなり、上腹部痛を引き起こすケースもあります。
また人前ではゲップなどをしづらいため、抑えようとするとそれがストレスになり、また唾液と共に空気を呑み込むという悪循環が生じ、人によっては不安症やうつ状態におちいることさえあるといわれています。
このように、空気嚥下症の第1の原因は「ストレス」と考えられていますが、ストレスによる空気嚥下症は自律神経のバランスが崩れて過敏性大腸症候群を併発しやすいといわれているので注意が必要です。
空気嚥下症の第2の原因は「歯のかみしめ」です。人の上下の歯は、リラックスしているときには通常、数ミリ開いています。しかし、歯を噛みしめると、舌が上あごに付いて唾液が奥へと流れやすくなり、それだけ唾液と一緒に、空気を呑み込むことが多くなります。
無意識に歯を噛みしめがちなのは、緊張や不安を抱えているときです。また、スポーツをしたり、重い荷物を運んだり、仕事を頑張ろうとしたとき、あるいはデスクワークで、姿勢がうつむきになった場合も、軽く歯を噛みしめたり、舌を上あごに押し付けてしまう傾向があります。このような慢性的な日常習慣が、空気嚥下症のリスクとなると考えられています。
ゲップやガスが頻繁に出ると、自己判断で市販薬を服用するケースが多くみられます。しかし、空気嚥下症の場合、消化器系が原因とは限らないので、市販薬の服用が根本的な治療につながるとは限りません。
そのため、病院で消化器系に原因があるかどうかを確認することが大切です。また、歯を噛みしめることが癖になっている場合は、歯科や口腔外科を受診してマウスピースを作ってもらい、噛みしめ癖を是正することで症状を軽減できる場合もあります。さらに、仕事や人間関係などのストレスが原因になっていると思われる場合は、心療内科なども受診して相談してみてもいいでしょう。
空気嚥下症は命を左右する病気ではありませんが、人によって多様な症状がみられ、原因が特定しづらいケースも多く、治癒が長期化して精神的なトラブルを抱えるケースも少なくありません。原因に則した治療を焦らずに続けていくことが大切です。また、深刻な病気が隠れている可能性もあるので、必ず病院で診てもらうようにしましょう。