記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
下血(げけつ)は、肛門から血液が出る症状です。子供に下血の症状がみられると、病気が潜んでいるのではないかと心配になると思います。この記事では、子供の下血から考えられる病気を解説していきます。
下血(げけつ)とは、肛門から血液が出る症状です。これは胃や腸などの消化器で出血した血液が、肛門から出ることで起こります。消化器の病気で出血を起こす病気は数多くあり、腸に腫瘍や炎症が起きる病気、痔などがあります。
下血には赤い色をしているものと、黒い色をしているものがあります。肛門付近で出血すると、鮮やかな赤色の下血が起こります。痔の出血が代表的なものです。一方、出血から時間が経つと酸化して黒く変色します。これは出血部位が上部消化管だった場合に変色がよく起こります。
下血は血液だけが出てくる場合と、便に血液が混じる場合とがあります。便の表面に血液が付いている場合には、S状結腸や直腸、肛門などの出口に近い部位での出血が考えられます。また、粘膜の炎症や潰瘍性変化が起きている場合は、粘血便(粘液と血液が混ざった便)が出ることがあります。
下血は子供の病気でも起こります。下血を起こす可能性のある病気のひとつは、細菌性の腸炎です。これはいわゆる食中毒で、O-157型大腸菌やサルモネラ菌、カンピロバクターなどの細菌によって引き起こされます。これらの細菌が付着したものを食べると、毒素によって粘膜に炎症を起こします。学童期よりも大きい子供は自分の自然治癒力で治ることもありますが、乳幼児の場合は重症化することがあるので病院での治療が必要です。
真っ赤な下血を伴う病気として、切れ痔や裂痔があります。これは硬い便によって肛門の粘膜が切れることで起こります。排便時に痛みがあるため子供が排便を嫌がることがありますが、放置すると便秘になってしまうことがあるので注意が必要です。ほとんどの場合出血量は少なく、下着に血液がわずかに付着する程度ですが、痛みがあることが特徴です。
赤いゼリー状の粘血便が出る場合は腸重積症があります。腸重積症は小腸が大腸の中に入り込んでしまう病気で、腸に炎症が起きると粘血便が出ます。
腸重積症は2歳以下の子供がかかることが多い病気です。風邪などの感染症が腸にも起こり、腸が腫れてしまうことが原因で起こると言われています。風邪の症状の一種だと思ってしまうと発見が遅れる場合があります。
腸重積症は発症してから24時間以内であれば修復することができますが、治療が遅れると腸の壊死を起こしたり、腹膜炎を起こすことがあります。場合によっては腸の一部を切除することもあります。また、強い痛みを伴うことが特徴なので、激しい痛みによりショック症状を起こす危険もあります。腸が重なることで腸の通りが悪くなり、嘔吐したり、食べ物を食べなくなります。こうした状態が続くと、小さな子供の場合には脱水症状が起きることもあります。
このように、腸重積症が重症化してしまうと治療が難しくなったり、合併症を起こしたりする恐れがあるため、腸重積症が疑われる症状がある場合には早めに受診することが大切です。
子供に下血の症状がみられるとき、切れ痔や裂痔のほかに、腸重積症の可能性があります。おむつや下着に粘血便が付いていたり、痛みを訴えたりするときは、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。