記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2018/1/22
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
どちらか一方の目が中心からずれている状態を「斜視」といいます。この記事では、斜視になる原因とともに、そのままにしておくとどのような影響が及ぶかを解説します。
人はものを見るとき、目を動かす筋肉や神経が働いて見たいものに視線が向かいます。しかし、この筋肉や神経に異常があると、視線が見たいものからずれた場所に向かいます。このような状態がどちらか一方の目にあらわれることを「斜視」といいます。
斜視は比較的よく見られる症状です。中でも、目が内側にずれている「内斜視」は、斜視の中で最も多く、全体の70%を占めています。斜視が起こる原因として、目の筋肉や神経の異常のほかに、強い遠視、遺伝や脳障害があらわれている場合などがあります。
斜視になる原因として、先天性斜視と、後天性斜視があります。
先天性斜視は、先天的に目の筋肉や神経の異常が起こるもので、遠視の症状も先天的なものが要因となって起こることがあります。一方、後天性斜視は後天的な要因、たとえば脳の障害(脳腫瘍、脳動脈瘤、脳梗塞など)によって目を動かす神経が正常に働かなくなった結果、斜視という症状になってあらわれることがあります。
先天性斜視の場合、脳が発達する大切な時期にものをしっかりと見て脳を発達させることができないため、弱視になるなど、将来に大きな影響が及ぶ可能性があります。特に8歳までに治療をすることが重要だとされており、その時期を逃すと、ものがしっかりと見えるようになっても弱視の状態が改善しないことが多いようです。このため、斜視があるとわかった時点で治療を開始し、ものをしっかり見えるようにすることが大切なのです。
斜視になると、見ているものの焦点が左右で合っていないため、ものが二重に見えている状態になります。このような状態でものを見続けると脳が混乱して疲れてしまうため、斜視がある方の目を使わなくなります。
ものを見なくなってしまうと、目の機能が落ちて視力がどんどん弱くなり、弱視の状態になります。弱視は目の発達が止まってしまった状態で、メガネなどで視力を調整しても視力が変わらなくなります。こうなると、後から治療をしても視力を回復させることが難しくなってしまいます。
このため、もし子供に斜視があるかもしれないと感じたら早めに眼科を受診し、斜視があるとわかった時点ですぐに治療を開始することが大切です。目の発達段階にある子供時代に治療を開始し、斜視による目の発達の妨げを最小限にすれば、ものを見るという能力を発達させることができます。
子供の斜視をそのままにしてしまうと弱視になり、大人になってからも、ものを見ることに支障をきたす可能性があります。普段から子供の表情をよく見るように心がけ、目の動きで気になることがあったら眼科で診てもらいましょう。