バセドウ病の治療薬のチアマゾール(メルカゾール®)と無顆粒球症の関連性

2018/1/12

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

バセドウ病は甲状腺が過剰に働くことで、甲状腺ホルモンが増えすぎてしまう病気です。甲状腺ホルモンの量を抑えるために、治療薬としてメルカゾール®が使われることがあります。この記事では、メルカゾール®の副作用として現れるおそれがある無顆粒球症について解説しています。

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無顆粒球症はどんな病気?

無顆粒球症とは、白血球に分類される成分のうち、特に顆粒球と呼ばれるものが、血液中からほとんど無くなってしまう状態になることをいいます。
顆粒球は骨髄で生み出される白血球の一種で、体外から入ってきた細菌やウイルスなどを殺す効果がある顆粒を持っています。

顆粒球には、好中球、好酸球、好塩基球がありますが、無顆粒球症にかかると、特に好中球が極端に減っていきます。好中球は白血球全体の過半数を占める顆粒球です。つまり、この好中球の著しい減少によって、身体へ侵入してきた細菌への抵抗力を大幅に弱らせ、細菌感染症にかかりやすくなります。

無顆粒球症になると、熱が出たり喉が痛んだり、全身がだるくなったりする症状がみられます。風邪にも似た症状ですので、大したことないと勘違いしてしまい、病院へ行かずに放置されてしまうケースも多いといわれています。
しかし、無顆粒球症は身体の抵抗力が弱くなっている状態であり、肺炎や敗血症など、深刻な合併症を引き起こすおそれもありますので注意が必要です。

バセドウ病の治療薬が無顆粒球症を引き起こす可能性があるって本当?!

バセドウ病は甲状腺が過剰に働くことで甲状腺ホルモンの分泌量が増えすぎてしまう病気です。新陳代謝が過剰に活発になり、発汗や手足の震え、だるさ、動悸などの症状が生じます。
このバセドウ病の治療薬として知られるのが、甲状腺ホルモン抑制薬である「チアマゾール(メルカゾール®など)」です。
チアマゾールを粘り強く飲み続けると、甲状腺ホルモンを作り出す体内の酵素の活性度を低下させ、甲状腺ホルモンの量が適正値に近づくので、バセドウ病の症状は快方へと向かいます。

ただし、チアマゾールには、甲状腺ホルモンだけでなく、血液中の白血球(顆粒球)の生成まで抑制してしまいます。つまり、無顆粒球症の副作用を引き起こす危険性があるとみられているのです。

無顆粒球症の早期発見のために・・・

まず、チアマゾールを処方されているバセドウ病患者の人は、風邪によく似た症状が現れたときに「風邪じゃないかもしれない」と疑うことが大切です。軽い症状であっても、念のため医師の診察を受けるようにしましょう。

通常、チアマゾールを処方している患者に対しては、定期的に血液検査を実施し白血球(顆粒球)の減少傾向が見られないか、モニタリングを続けます。チアマゾールによる無顆粒球症の副作用が出るとすれば、飲み続けて2~3か月までといわれています。少なくとも2か月間は、2週間に1回ペースの血液検査を継続することが望ましいといえるでしょう。

おわりに:チアマゾールで治療しているときは、風邪のような症状に気をつけよう

バセドウ病の特効薬としてメルカゾール®などのチアマゾールの処方は有効とされていますが、血液中の白血球を減らしやすく、無顆粒球症という病気にかかるリスクがあります。チアマゾールの処方には、しばらく継続的な血液検査が必須だと心得て、もし風邪のような症状が現れたときは、必ず病院で検査してもらいましょう。

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