アトロピン投与、手術・・・肥厚性幽門狭窄症の治療法を解説

2018/1/9

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

肥厚性幽門狭窄症とは、赤ちゃん特有の病気であり、胃の出口(幽門)が狭くなってしまうことで胃の内容物が腸に送られなくなってしまう病気です。限界まで胃にミルクが溜まると、赤ちゃんはミルクを吐き出してしまいます。この記事では肥厚性幽門狭窄症の治療方法について解説しています。

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肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)とは?

肥厚性幽門狭窄症は、生まれたばかりの乳児に特有の症状で、どちらかというと男の子がかかりやすいといわれています。生後2週から3か月ぐらいまでの赤ちゃんが、ミルクを飲み込めずに吐き出してしまう病気です。

肥厚性幽門狭窄症にかかっている赤ちゃんは、胃の出口である「幽門」を取り囲む筋肉の厚みが一般のサイズよりも大きくなっていて、幽門の幅が狭まっている状態です。そのために、ミルクが腸へ出て行かず胃の中に溜まってしまうため、飲める量にすぐ限界が来て、口から出してしまいます。肥厚性幽門狭窄症の嘔吐は、噴水のように勢いよく吐き出すのが特徴です。
肥厚性幽門狭窄症でない赤ちゃんも、ミルクを吐き出すことはありますが、大半は口元からダラッと垂れ流すような吐き方になります。

なぜ肥厚性幽門狭窄症にかかる赤ちゃんがいるのか、現代の医学では分かっていません。生後間もない赤ちゃんや、生後6か月から1年の幼児にはほとんど見られない原因についても不明であり、今後の研究が期待されています。

肥厚性幽門狭窄症の診断法

肥厚性幽門狭窄症の治療が遅れると、体重減少が起こり成長が遅れます。治療が遅れると出生時の体重を下回るケースもあり、生命維持にも危険な状態にもなるおそれがあります。
肥厚性幽門狭窄症の診断には、超音波検査で幽門の厚みを画像で確認する必要があります。幽門筋の厚みが4ミリ以上で、幽門と十二指腸を繋ぐ幽門管が14ミリ以上あることが確認されれば、肥厚性幽門狭窄症と診断されます。

代表的な2つの治療法について

有効な治療法としては、内科的な投薬治療と、外科的な手術の2種類があります。

・内科的治療
幽門の周囲にある分厚くなった筋肉を緩めて、幽門を広げるため、「硫酸アトロピン」という薬を、ミルクをあげる前に投与します。

・外科的治療
幽門を取り囲む筋肉を切開することで、幽門の大きさを広げる手術です。「粘膜外幽門筋切開術手術」といいます。

どちらの治療法にもメリット・デメリットが・・・よく相談して選ぶことが大切

内科的治療である「硫酸アトロピン療法」は、赤ちゃんの身体に傷を付けず、麻酔などで身体に負担をかけないメリットがあります。
ただし、薬物の作用で脈が速くなる副作用がありえますし、即効性を得られない場合が多いです。1~2週間が経っても嘔吐が止まらない場合は、効き目が認められないものとして、外科的治療への移行が検討されます。

「粘膜外幽門筋切開術手術」は、手術の翌日からさっそくミルクを飲むことができ、即効性が認められます。また、ヘソのあたりからメスを入れれば手術の傷口も目立ちません。もちろん麻酔と切開のリスクを伴いますが、手術の安全性は高く、内科的治療ではなく手術治療をまず検討する例もあります。

どちらの治療法にもメリットとデメリットがあるので、担当医と相談しながら納得のいく治療を選ぶようにしましょう。

おわりに:事前説明をもとに納得のいく選択を

肥厚性幽門狭窄症は、食欲は旺盛なのに、消化管の構造のせいでミルクを吐き出してしまう、赤ちゃんにとって深刻な症状を伴う病気です。発症の原因はわかっていませんが、治療法は確立されています。ただし、内科療法と外科療法には、両者ともに一長一短があるので、赤ちゃんの将来のために、担当医と相談しながら慎重に選択しましょう。

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