トキソプラズマから妊婦を守るための予防法とは?治療はできるの?

2018/1/12 記事改定日: 2018/7/20
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

トキソプラズマ症とは、トキソプラズマという原虫による感染症です。大人がなっても深刻な症状がでることはないとされていますが、妊婦が感染すると胎児に感染するおそれがあるといわれています。この記事ではトキソプラズマ症の予防で妊婦が気をつけるべきことをまとめています。

トキソプラズマ症とは?

トキソプラズマとは、人間の目に見えないほど微小な原虫の名前です。基本的に、哺乳類や鳥類といった恒温脊椎動物に感染する能力があり、土中のほか、家畜や猫など、人間に身近な動物の糞の中にも生息しています。
トキソプラズマが混じっている土で、畑仕事などをしていると、人間にも感染することがあります。

ただし、成人であれば、たとえトキソプラズマに感染しても症状がでることはほとんどありません。仮に自覚症状が出たとしても、発熱やリンパ腺が腫れるなど、風邪にも似た症状で済みます。

妊婦のトキソプラズマ感染には注意!

妊婦が感染するとトキソプラズマが胎盤を通じて胎児に感染するリスクがあるため注意が必要です。胎児がトキソプラズマに感染すると、水頭症や視力障害、脳内石灰化などの深刻な障害が残るおそれがあります。また、流産や死産のリスクも高まるといわれています。

もっとも、妊婦が妊娠前、過去に一度でもトキソプラズマに感染したことがある場合は、体内に抗体(免疫)ができているため胎児までトキソプラズマの影響が及ぶことはほぼありません。

問題なのは、妊婦が生まれて初めてトキソプラズマに感染する場合です。この場合は体内でトキソプラズマを退治する術がほとんどないので、胎児にも感染する危険性がより高くなるのです。

妊婦が避けたほうが良い行動①:ガーデニングなどの土いじり

前述の通り、土にはトキソプラズマが生息している可能性があります。畑仕事やガーデニング、あるいは子供の遊びに付き合って、公園の砂場をいじるなどしていると、土の粒子が舞って、トキソプラズマを体内に取り込みやすくなります。

もし土いじりをしなければいけない状況にあるときは、事情を説明して土いじりを他の人に代わってもらいましょう。

妊婦が避けたほうが良い行動②:生肉を食べること

火を通していない肉の中には、トキソプラズマが生息していることがあります。生肉だけでなく、加熱が不十分な肉を食べることも感染の原因です。

たとえば、レアステーキ、ローストビーフ、生ハム、ユッケ、馬刺し、肉のパテなどは、調理の過程でトキソプラズマが死滅していない可能性があります。肉全体が、少なくとも67度以上に加熱されていると、トキソプラズマが死滅し始めますので、妊娠中はは、よく火を通した肉を食べるようにしましょう。

妊婦が避けたほうが良い行動③:猫の糞への接触

部屋の中で常に飼っている猫であれば、地面にほとんど接触しないため、トキソプラズマに感染する危険はほとんどありません。
一方、たびたび外に出ている猫や、野良猫を飼い始めたときには、感染に気をつけなければなりません。もっとも、人間への感染の危険が高まるのは、感染してから2週間以内の猫です。すべての外猫が危険なわけではありません。

ただし、妊婦が猫の糞を処理したり、猫の餌として生肉を食べさせたりしないようにするなどの配慮が必要になるでしょう。

トキソプラズマ症の治療法

トキソプラズマ症は特に症状がなければ治療の必要がない場合がほとんどです。
しかし、妊娠中の場合は、胎児に感染させてしまう可能性があるため、トキソプラズマ症に詳しい専門医を受診する必要があります。

妊婦本人への治療は、眼症状がある場合では、ステロイド入りの点眼薬が使用されます。その他の発熱やリンパ節腫脹などの症状は自然に治ることがほとんどなので、特に治療の必要はありません。
胎児に感染していることが分かった場合には、先天性トキソプラズマ症の発症を抑えるためにスピラマイシンなどの薬を一歳の誕生日を迎える頃まで投与することがあります。

おわりに:お腹の赤ちゃんのために、妊娠中はトキソプラズマに気をつけよう!

トキソプラズマ症は、普段の生活ではそれほど気にする必要がない感染症ですが、新しい命を宿している妊婦にとっては一定以上のリスクがあります。感染症を気にしすぎてしまってストレスが溜まってしまうことも胎児にも良くありませんので、周囲の人も配慮しながら、トキソプラズマ感染に注意していきましょう。

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