記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
クッシング病は、下垂体の腫瘍(腺腫)が副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を過剰分泌することで発症します。手術による腫瘍切除が治療の基本となりますが、その他にも治療方法はあるのでしょうか。この記事では、クッシング病の治療方法について詳しく解説しています。
クッシング病の第一の治療法は、下垂体にできている腫瘍を手術で取り除くことです。一般的には経鼻(ハーディ)手術を行います。これは鼻から内視鏡や顕微鏡を挿入し、鼻の奥でトルコ鞍(下垂体のあるところ)の骨を除去して腫瘍を下方から取り除く手術法です。
熟練した脳外科医が行えば、手術時間は2~3時間程度とされており、手術後は翌日から歩行も食事も可能で、回復が順調であれば、一般的には手術後1週間程度で退院できるといわれています。
なお一度手術をした後でも、腫瘍が再発する可能性があり、再発した場合は再度手術が検討されます。
下垂体にできている腺腫は小さいサイズであるケースが多いため、高性能のMRIでも腫瘍の位置がわからなかったり、手術を行っても、腫瘍を発見できないことがあります。腫瘍を発見できない場合は、正常な下垂体を切り開いて腫瘍を探索する必要があり、高度な技術を要します。探索手術を行った場合には、術後に下垂体機能低下症に陥り、ホルモン剤の補充が必要となることがあります。
完全に腫瘍の摘除ができず、ACTHの過剰状態が残ってしまった場合には、薬物治療や放射線療法を行います。
放射線療法(ガンマナイフなど)は、術後にホルモンが正常化しなかった場合や、下垂体腺腫(腫瘍)が大きく手術ですべて摘出できなかった場合に検討されることが多いです。しかし同一の部位には一度しか放射線治療が施せないため、慎重に計画を練る必要があります。また副作用として下垂体機能が低下するなど、正常な下垂体機能が損なわれることもあるため、長期のフォローアップが必要です。
薬物治療には、副腎皮質ホルモン合成阻害薬などがあります。しかし、薬物治療で良好な状態を維持するのは困難なことが多いのが実情です。下垂体腺腫から産生されるACTHを確実に抑える薬は今のところないため、手術療法で改善しない場合、内服薬や注射薬で効果のありそうなものを試すか、副腎に作用して直接にコルチゾール産生を抑える薬を用いるかの選択になります。
上記の理由から、基本的には手術治療が用いられ、手術が成功すれば多くの症状や異常は改善します。しかしながら、手術後しばらくはACTHの正常な分泌が回復せず、手術前とは逆に副腎皮質ホルモンが不足した状態に陥ってしまうため、半年間ほどは薬(副腎皮質ホルモン、糖質コルチコイド)を内服する必要があります。
糖尿病、高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症などを合併することが多いので、それらの治療、予防が必要です。同時に筋力が落ちるため転倒による骨折を予防すると共に、うつ傾向に陥りがちなので自殺予防対策などが求められます。さらに、著しく免疫力が低下し感染に弱くなるため、人ごみを避け、肺炎や敗血症を防ぐ必要もあるでしょう。
クッシング病の手術は非常に難易度がいため、十分に経験のある下垂体外科医による執刀がすすめられます。そして、クッシング病を放置すると重篤化につながるおそれもあります。ただし、手術が成功すれば予後は良好といわれているので、手術のリスク、手術以外の治療法などよく検討したうえで、早期治療に臨みましょう。