上腕骨顆上骨折によって起こるかもしれない合併症とは?

2018/1/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

上腕骨顆上骨折とは、上腕骨という二の腕の骨の骨折の一種です。骨折による痛みや可動制限だけでなく、しびれや感染症、壊死などの合併症を発展する可能性があるといわれています。この記事では上腕骨顆上骨折の症状と合併症について解説しています。

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上腕骨顆上骨折はどんな病気?

 

上腕骨顆上骨折は、肘関節に近い部分で上腕骨(肘と肩の間の骨)に起きる骨折です。この骨折は、遊具から転落したり運動時に転倒した際に、肘や手を突くことで起こります。

症状としては、肘の周囲に強い痛みが起こり、痛みで肘を動かすことができなくなります。
また神経の損傷(しびれや麻痺)や血管が傷ついてしまうと、治療が大掛かりになる可能性があるので注意が必要です。神経や血管の合併損傷がおきると、手首の脈拍が弱くなったり、手や指のしびれ感、異常感覚、運動障害が生じ、蒼白や暗青紫色に変色します。

上腕骨顆上骨折はどんなときに起こりやすいの?

上腕骨顆上骨折は主に3~8歳の小児に生じる骨折です。幼稚園児と小学生に多く、男女比は約2対1です。小児に最も多い骨折のひとつで、肘周辺の骨折の60%を占めます。

受傷原因は、90%以上が転落や転倒の際に肘を伸ばして手をついたことによるものです。具体的には、滑り台、鉄棒、ブランコなどで遊んでいる時の転倒、転落がほとんどであり、 これは小児の上腕骨顆上部は骨の表面組織が薄く骨の断面積も小さいため、強い力が集中してしまうからだと考えられています。

上腕骨顆上骨折の発生と同時に起こり得る合併症について

皮膚の損傷

上腕骨顆上骨折が伸展型で転位が大きい場合、骨の先端が皮膚前面を突き破ることがあります。症状がひどいと、骨の先端が皮膚の外へ露出します。このような場合、創傷部分から感染症を併発して重症化するおそれがあります。

血管の圧迫もしくは損傷

肘のやや上の、上腕骨の前面上には上腕動脈という血管が通っています。上腕骨顆上骨折で、転位した骨折片がその血管を圧迫すると、前腕以下の組織に血液が循環しなくなり、血行障害を起こし、患部の上肢が蒼白(チアノーゼ)になります。放置するとフォルクマン拘縮に至り、重篤な後遺症を残すことになります。

フォルクマン拘縮(前腕部のコンパートメント症候群)

フォルクマン拘縮初期の症状としては、前腕より手指にかけて腫脹、疼痛、チアノーゼ、橈骨動脈の拍動の消失、知覚異常や麻痺などが現れます。筋肉の拘縮や壊死につながるため、初期症状の出現から6~8時間以内に救急処置をする必要があるのです。
いったん拘縮を起こすともとの正常な状態には戻らなくなります。特に、疼痛、腫脹、チアノーゼ、脈拍欠如、運動麻痺、異常知覚という6症状が出現したときは手遅れになるケースが多いといわれています。

また、神経の圧迫上腕骨顆上骨折では、周囲の神経を圧迫して神経麻痺を起こすことがあります。骨折部周囲を通る代表的な神経は、橈骨神経、正中神経、尺骨神経で、このうち、骨折受傷時に合併する神経圧迫損傷は、橈骨神経と正中神経が多いとされます。

おわりに:合併症を防ぐためにも、早期の治療が大切

上腕骨顆上部は、すぐ近くを神経や血管が走るため、転位や膨張の程度によっては合併症を招くおそれがあります。受傷した場合はなるべく患部を動かさないようにして、合併症を防ぐため、一刻も早く整形外科や救急外来を受診しましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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