尿道下裂の手術は2回に分けて行う必要があるの?

2018/1/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

尿道下裂とは、生まれつき尿道口が陰茎の裏側にできてしまう病気です。自然治癒することはほとんどないため、根本治療には手術が必要となります。この記事では、尿道下裂の手術方法について詳しく解説していきます。

尿道下裂はどんな病気?

尿道下裂とは、生まれつき陰茎の腹側(本人から見ると陰茎の裏側)の発育が障害され、尿道が陰茎の先端(亀頭)まで形成されず、陰茎腹側に尿の出口(外尿道口)がある状態をいいます。典型的な尿道下裂では、包皮は亀頭部にフードのようにめくれた状態となります。審美的な問題の他、尿線が下向きになるため立位排尿困難が生じます。また勃起時も下向きに曲がるため、屈曲が強い場合、性交渉に支障が出ることがあります。

尿道下裂の原因はまだ明らかではありませんが、何らかの原因で胎児の精巣が作り出す男性ホルモンに異常があったり、母体が妊娠中に受けた内分泌的環境の変化が関係していると考えられています
発生頻度は男児約300人に1人とされます。遺伝性はないものの、家族内発生が認められるケースがあります。

尿道下裂の治療の流れと目的とは・・・

 

成長にともなって自然に良くなることはないことから、治療法として外科的手術が行われます。手術の目的は、排尿やセックスを支障なく行うこと、特徴的な外観を整えること、将来生じる可能性のある心理的影響を回避することなどです。

尿道下裂の手術方法は200種類以上あるといわれます。大きく分けると、1度の手術で尿道の形成や陰茎の屈曲などすべてを治す1期的方法と、陰茎の屈曲を矯正した後に尿道形成を行う2期的方法があり、尿道下裂の程度や医療機関により数種類の方法が使い分けてられています。一般的に、2期的手術の方が合併症の発生が少なくてすむと考えられていますが、最近では1期的手術が増加傾向にあるといわれています。

尿道下裂の手術法について

まず全身麻酔をかけたうえで、包皮や陰茎の屈曲となるつっぱり(索組織など)を剥離あるいは切除して陰茎の屈曲を治します。それでも屈曲が強いときは、尿道 と反対側(陰茎背側)を手繰り寄せて陰茎全体がまっすぐになるように矯正する場合もあります。
次に足りない尿道を形成します。尿道形成には尿道に成長する 予定だった組織(尿道板)や包皮の一部を使用し、人工的な異物は使用しません。
最後に包皮の形を亀頭部が一部露出した状態に整え、終了します。術後は 尿道にカテーテルを留置し(1~2週間)、排尿を管理します。以上を1回の手術で済ませるか複数回に分けて行うかが、1期的方法と2期的方法との違いです。

合併症、観察経過etc・・・手術に関する注意点

尿道下裂の手術は高度な技術を必要とします。軽度の尿道下裂であれば成功率は90~95%ですが、高度の症例では、2、3人に一人の割合で何らかの再手術が必要になるといわれています。

また陰茎がある陰部は非常に細菌感染を起こしやすい場所です。手術の際の傷に感染が起こると、合併症の発生率が高くなるおそれがあります。術後の合併症としては、作った尿道の途中に穴が開く尿道皮膚瘻や、亀頭が元のように別れた形に戻る亀頭離開、作った尿道が狭くなる尿道狭窄、陰茎屈曲の再発などがあります。再手術が必要な場合には陰茎の皮膚が回復するまで通常半年以降期間をあけていますが、成功の確率はさらに低下するといわれます。
手術や術後管理が精神面に与える影響を考慮して、早期手術がよいと考えられるようになっており、1歳前後からの手術がすすめられることもあります。

おわりに:合併症のリスクがあるため、術後も経過観察が必要

尿道下裂の手術では、予定した結果が必ず得られるとはかぎりません。合併症の問題も生じやすいため、本人の生活への影響を考慮した上で治療の必要性や時期を適宜判断していくことが大切です。手術後も成長にあわせて思春期まで通院を続け、経過観察を怠らないようにしてください。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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