記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/16 記事改定日: 2020/4/20
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ガラクトース血症とは、血液中のガラクトースの量が増えてしまう病気です。生まれつきガラクトースを代謝する酵素に異常があることで発症します。この記事では、ガラクトース血症の症状や検査、治療について解説していきます。
糖質は、グルコースに代表される単糖類が基本単位となり、それらが様々に組み合わさってできています。
乳糖であるラクトースは哺乳類の乳汁に多く含まれる糖質です。乳糖は腸内でグルコースとガラクトースに分解されてから吸収されるため、乳児は体に大量のガラクトースが流入することになります。
ガラクトース血症とは、ガラクトースの代謝に必要な酵素が先天的に活性低下してしまうことで、血中のガラクトース濃度が高くなる病気です。ガラクトース血症には、Ⅰ~Ⅲ型まであり、それぞれ症状や発生頻度が違います。
Ⅰ型は常染色体性潜性遺伝疾患です。
新生児早期から哺乳開始後に
などの症状が現れ、低血糖や白内障、肝障害を起こし、感染症を併発することもあります。
乳糖の除去をしなければ死に至ることもある危険な病気です。
Ⅱ型は常染色体性潜性遺伝疾患で、白内障が唯一の症状とされています。成長や発達には影響がありません。
Ⅲ型は常染色体性潜性遺伝疾患で、酵素欠損が赤血球や白血球のみに影響する末梢型と肝臓をふくむ他の組織に影響を及ぼす全身型の2種類に分けられます。
全身型は非常にまれで、日本人の症例は報告されていません。
ガラクトース血症の検査方法は、酵素法とボイトラー法の2種類があります。
ガラクトース血症は、新生児を対象とした「新生児マス・スクリーニング」の対象疾患です。
新生児マス・スクリーニング検査とは、生後できるだけ早い時期に治療を開始することで障害の発生を防ぐことができる先天代謝異常の早期発見を目指した検査であり、生後4~6日目に日本で生まれた全ての赤ちゃんを対象に行われます。
1977年から開始された検査で、足のかかとなどから血液を採取して、試験紙に付着させることで病気の有無をスクリーニングすることが可能です。
現在の対象疾患は25にも上り、フェニルケトン尿症、メープルシロップ血症などのアミノ酸代謝異常、ガラクト―ス血症、先天性甲状腺機能低下症や先天性副腎過形成症などの内分泌疾患、有機酸代謝異常症、脂肪酸酸化異常症などが含まれます。
門脈血流異常によるガラクトース高値のほとんどは、特に症状が出ることなく成長、発達も順調に進みます。軽度の場合、多くは無治療で経過観察をします。
バイパス血流量が多く、血中ガラクトースの高い状態が続いている場合には、乳糖とガラクトースが除去された治療用のミルクを使用します。
ただし、異常血管が自然消失しない場合には、カテーテルや外科手術が必要になることもあります。
ガラクトース血症と診断された場合は、乳糖を含まない離乳食や食事を摂る必要があります。
乳児期には乳糖を除いたミルクを使用し、離乳食を開始した後も乳糖が含む食材を避けなければいけません。市販の離乳食には乳糖が含まれているものも多々ありますので、成分をしっかりチェックしましょう。
また、離乳食を終えた後も乳糖を避ける食事を続けなければならず、食材に注意する必要があります。近年では、乳糖を完全に除いたメニューのレトルト食品なども市販されていますので、それらのものをうまく組み合わせながら栄養バランスに注意して食事を摂るようにしましょう。
ガラクトース血症は、先天的にガラクトースを代謝する酵素に問題が生じ、血液中のガラストースの量が過剰になってしまう病気です。ミルクから栄養を補っている赤ちゃんにとっては影響が大きく深刻な状態になることもありますが、必ずしも治療が必要とは限らず、経過観察になることも少なくありません。診断をもらっても過剰に不安にならずに、医師に相談しながら適切な治療を続けていきましょう。