記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脊椎圧迫骨折は、脊椎が押しつぶされたように骨折してしまうことです。主な原因は骨粗鬆症であり、治療には長い期間が必要になるとされていました。この記事では、従来の方法よりも早期の回復が期待できるといわれているBKP治療について解説しています。
脊椎圧迫骨折とは、脊椎(背骨)が体重に耐えられなくなり、上下方向へ押しつぶされるように崩壊してしまうことです。脊椎の骨密度が低下し物理的に脆くなる骨粗鬆症が原因になることが多いといわれています。
脊椎圧迫骨折が起きると、立ち上がったときや、横になって寝返りをうったときなどに、背中から腰にかけて激痛が走ることがあります。
ほとんど痛みを感じないケースもありますが、その場合は圧迫骨折の発覚が遅れてしまうだけでなく、ますます悪化が進む危険が潜んでいます。耐えられないほどの痛みでなく、違和感をおぼえる程度でも圧迫骨折をしている可能性があるので注意が必要です。
また、脊椎圧迫骨折が慢性化すると、脊椎の変形や神経障害(麻痺、しびれ)など、より深刻な症状へと進んでしまうおそれもあります。
少しでも異変を感じたら病院を受診することが重要です。
脊椎圧迫骨折の主な治療法として、「保存的療法」と「外科的療法」があります。
保存的療法は、患部をできるだけ動かさずにすることで、圧迫骨折部分の自然回復を目指す治療法です。患部をギプスやコルセットで固定し、骨粗鬆症の治療薬などや痛みなどの症状を抑える薬を飲んで安静に過ごします。
外科的療法には「固定術」と「椎体形成術」とがあります。
固定術は、背中や身体の脇側を切開して、金属製のネジや棒などで骨折部分の脊椎を固定することで、症状を軽くする治療法です。
椎体形成術は、骨折部分に骨セメントと呼ばれる材料(HAブロックやポリメチルメタクリレートなど)を充填することで、脊椎の骨密度を補強し、症状を軽くする治療法です。固定法に比べれば、切開が少なく手術時間も短くて済むため、患者の身体へかかる負担が軽くなるというメリットがあります。
BKP治療とは、Balloon Kyphoplasty(風船による椎体形成術)の略で、アメリカで1990年代に開発された、椎体形成術の進化版といえる手術法です。
圧迫骨折によってつぶれてしまった部分に、風船状の手術器具を差し入れて、脊椎内で膨らませて、つぶれた部分を持ち上げ、骨形状を元の状態に改善させます。そして、その状態を固定するため、風船内に骨セメントを注入します。
椎体形成術では、骨セメントで骨折部分を固定することはできても、元通りの形状に回復させることは難しかったのですが、その弱点を解決したのがBKP治療法です。
ただし、全身麻酔を使用する手術であるため、手術自体の身体的リスクは高いといえるでしょう。また、骨セメントが医師の意図通りに注入されなかった場合も、身体への悪影響が心配されます。
脊椎圧迫骨折の治療は、骨粗鬆症の治療とも並行しなければならず、時間がかかり難しかったのですが、その点、風船状の手術器具を用いるBKP治療法の登場で早期の回復が期待できるようになりました。ただし、BKP治療法も一定のリスクがある手術だとあらかじめ留意する必要があります。医師と相談しながら、納得ができる治療方法を選択しましょう。