記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
シャイ・ドレーガー症候群とは、主に自律神経に異常が起こる病気です。めまいから始まり、進行すると排尿障害や排便障害、パーキンソン症状などが現れるようになります。この記事では、シャイ・ドレーガー症候群の予後とケア方法についてまとめています。
シャイ・ドレーガー症候群とは、神経に異常が起こる多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)の一種とされる病気です。
特に自律神経に異常が起き、女性よりも男性の方が3倍ほど発症しやすいのが特徴です。尚、この病気に遺伝性はありません。
発症原因はわかっていませんが、近年では自律神経や体の動きをつかさどる部分の神経細胞に変形が生じたり、異常な細胞が発生することによるものと考えられています。
シャイ・ドレーガー症候群の代表的な症状は、自律神経障害です。
初期段階では立った時にめまいを起こす起立性低血圧や排尿障害が起こり、症状が進行すると、めまいから強い倦怠感と失神を引き起こしたり、頻尿や夜間尿、失禁、残尿感を感じて排尿が難しくなります。
さらに進むと、便秘や便失禁を伴う排便障害、汗をかかなくなる発汗障害、大きないびきを伴う睡眠時無呼吸症候群、勃起障害、最終的には、小脳障害やパーキンソン病の症状も発症します。
シャイ・ドレーガー症候群には根本的な治療法や予防法は確立されていないため、治療は症状の段階に応じたケアや対症療法がメインとなります。
以下に、シャイ・ドレーガー症候群のケア方法について、病状の段階別に4つに分けてご紹介していきます。
起立性低血圧を起こさないように生活習慣を見直し、失神したときのために周囲に気をつけて生活する必要があります。
横になった状態から起き上がったり、立ち上がるときに特に症状が出やすいため、ゆっくりと体を起すようにしたり、着圧ストッキングを装着するのが有効とされます。
薬物治療とあわせて、日常生活でのリハビリが重要になります。
ベッドからの起き上がりや歩行、会話などの日常的なリハビリを通して、今ある運動や言語の機能を活かせるものを行うとよいでしょう。
ただし、運動機能の落ちている患者1人で行うと転倒とけがのリスクが大きいので、家族や専門家による介助のもとで行ってください。
シャイ・ドレーガー症候群が進行すると、筋肉の緊張や機能低下によって飲食物を飲み込む機能(嚥下機能)も弱くなります。
飲食物をあやまって気管に入れてしまうと誤嚥性の肺炎を起こすこともあるので、食事を食べやすい大きさやかたちにしたり、水分にとろみをつけるなどして対処しましょう。
小脳障害の症状の1つに、酔ったようにろれつがまわらなくなったり、言葉が途切れて聞きづらくなるなどによる、コミュニケーション障害があります。
思うようにコミュニケーションを取れない状態は、患者自身と周囲の人の両方にとって辛い状態となるため、今ある機能で円滑なコミュニケーションを取るための工夫が必要です。
指さしで会話できる文字盤やボードを使ってみると良いでしょう。
シャイ・ドレーガー症候群には、残念ながら根本的な治療法はありません。しかし、症状にあわせたケアで進行を遅らせたり、今ある機能を保存することは可能です。気になる症状があるなら、医療機関を受診して専門家のアドバイスをもらいましょう。