記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/17
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
子どもの頃にいじめにあった子どもは、大人になってからも精神的な問題を抱える割合が高い、とも言われます。しかし大人になった時、いじめられている子どもたちの、防波堤や港になれる可能性も大きいのです。どんな理由があっても、いじめてよい理由にはならないことを忘れないで、いじめについて考えてみます。
思春期のいじめには、理由のない場合があります。この時期独特の精神状態や、急な体の成長がもとで、訳もなくいらだって八つ当たりをする。このような子どもが何人か集まった時、近くに標的になる子どもがいたなら、いじめが始まる。ちょっとした悪ふざけ、遊び感覚で始まる場合が多いのです。
いじめる側の子どもも、いじめの仲間はずれになるのが嫌でいじめに加わってしまう。やりたくてやっているのではないのに、止めるタイミングが見つからないのです。
いじめられている子どもは助けを求めています。しかし、口に出せない子どもが多くいます。それは、親や大人に言ったらさらに悪い結果になると恐れているからです。子どもは先生や学校が力になってくれない場合があることを、知っています。言ったらさらに標的にされて、いじめがエスカレートすることがあるからです。
学校や大人に相談がしにくい場合は、子どものためのサポートの団体やレスキューの24時間電話相談室などがあります。匿名で相談することも可能です。ひとりで抱え込まないで、誰かに話をしてください。対処の方法や解決の糸口がきっと見つかります。あきらめないでください。これはいじめている子どもにも同じことが言えます。
いじめを目撃したら、勇気のいることですが、可能であれば止めるようにしてください。止めることで逆に自分がいじめの対象になる可能性がある場合は、第三者に必ず言ってください。まずは、友人、先輩、そして先生や親です。
誰にも言わない方がよいと自分で判断したのなら、外部の第三者に伝えてください。しかし、いじめを“なかったこと”には決してしないでください。
スマートフォンやSNSを子どもたちが使うようになり、急速にいじめのかたちが変わってきました。ネットのグループに写真や画像をアップロードして、みんなでからかったり、中傷したりする。最初は軽い気持ちでやっていたのが、どんどんエスカレートして、結果的にいじめられた子どもを自殺にまで追い込むことも出てきています。
以前のように暴言をはいたり、暴力をふるったりしなくても、自分の部屋にいていじめの加害者になる可能性があるのです。
いじめに対抗する最大のことは、生き抜いて、いじめたものよりも幸せな日々を過ごすこと、という説があります。いじめから抜け出るためには、信頼できる大人に「伝えること」と決して「あきらめないこと」です。そして大人は信頼できる大人でいる義務があります。
子どもの世界にも楽しいことはたくさんありますが、大人の世界にはもっと楽しいこと、やりがいのあることが広がっています。いつかきっと大人になるのですから楽しみにしておいてください。