記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/23 記事改定日: 2018/7/2
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
アルコール依存症の人にとって断酒(禁酒)は必要不可欠なものです。この記事では、アルコール依存症の離脱療法と治療方法について解説しています。
どうしてもお酒がやめられない人や、お酒をやめるように言われている人は、参考になると思います。ぜひ読んでみてください。
アルコール依存症の治療における薬物療法の目的は、ふたつあります。ひとつは、離脱症状や不安、不眠などの併発の症状を軽減させるためです。もうひとつは、断酒を維持することです。
アルコール依存症に陥っている人で、最も深刻な症状の一つにアルコールの離脱症状があります。
これは、アルコールの神経抑制作用によるものです。アルコールには脳内の神経を抑制する効果があり、適量であれば緊張や興奮を抑制してリラックスへ導く効果があります。しかし、長年にわたって多量な飲酒を続けていると、脳の中がアルコールの抑制作用に「慣れる」状態となり、リラックスした状態になるためには通常よりも多量のアルコールが必要となってしまうのです。
この作用のため、体内のアルコール濃度が減少すると、抑制されていた神経が過度に興奮して、発汗や手の震え、イライラ、血圧上昇などの自律神経症状が現れ、アルコール依存症の人はこれらの不快な症状を和らげようと更なるアルコールを欲するようになるのです。しかし、そのまま禁酒を続けると、2~3日ほどで幻覚や記憶障害、発熱などさらに重度な症状が現れるようになります。
多くは一週間ほどの断酒で症状は改善しますが、重度な依存症の人では、長引く離脱症状に苦しみ、飲酒を再開してしまうケースも少なくありません。
不安や不眠などの症状を軽減するためには、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬を用います。さらに、断酒を維持するためには、抗酒薬と、飲酒欲求を抑制する薬の2つが用いられることがあります。
抗酒薬は、飲酒すると気持ち悪くなるという状況をつくリ出す薬のことです。抗酒薬を服用中に飲酒すると、血中アセトアルデヒド濃度が上昇し、嘔吐や頭痛、顔面紅潮、呼吸困難などの症状が引き起こされます。これらの症状が引き起こされることで心理的に飲酒を断念しようとさせます。
アレルギー反応で皮疹(薬疹)などの副作用が出る可能性があるので、検査で確認してから処方してもらうことをおすすめします。また肝硬変や心疾患、呼吸器疾患を合併している場合には使用できませんので、持病については必ず担当医に全て伝えるようにしてください。
アルコール依存症の治療法には、薬物療法のほか、リハビリ治療や退院後のアフターケアなどがありますが、薬物療法単体で治療を進めるのではなく、入院治療の中でほかの治療法と組み合わせて行うことが重要と考えられています。
まず入院中に体と心に起きている合併症があればそれを治療し、離脱症状を軽減します。さらに、個人や集団で精神治療を行うことで、飲酒問題の現実を認識させ、自身で断酒を決断させることが重要です。
退院後のリハビリも視野に入れながら、必要な場合は抗酒薬の投与を開始することになります。退院後は家族や友人など周囲の理解とサポートが必要です。入通院を続けながら、処方された薬を正しく服用し、同じ立場の人たちと交流ができる自助グループに参加して精神的なケアをするようにしましょう。
アルコール依存症の人が、自身の意思だけで断酒することは困難です。離脱症状を和らげ断酒を維持するために、専門の医療機関で治療を受けて、適切なプログラムを作ってもらいましょう。また、家族やパートナー、友人など周囲の理解とサポートも必要になってきます。
自分の責めて思いつめて一人で悩みを抱え込むことは危険です。専門家と周囲の人、自助グループに助けてもらいながら、根気よく禁酒を続けていきましょう。