記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/15 記事改定日: 2019/4/25
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
坐骨神経痛は、腰から足にかけてしびれや痛みがあらわれる症状です。この症状を和らげるためにさまざまな薬が使われています。
この記事では、坐骨神経痛で使われる薬の種類について解説していきます。
坐骨神経痛は痛みを特徴とする病気のため、主に薬剤を使って痛みを取り除く治療が行われます。その際に使われる薬剤として、NSAIDsという非ステロイド性消炎鎮痛薬があります。これはステロイド以外の薬で炎症を抑える、痛みをとる、熱を下げるといった作用がある薬剤の総称です。
もうひとつは神経障害性疼痛治療薬で、痛みを伝える物質が放出される量を抑えて痛みを軽くする働きがあります。
このほか、強い鎮痛作用がある薬にオピオイドがあります。オピオイドは医療用麻酔で、脊髄と脳に存在するオピオイド受容体に結合することで痛みの伝達をブロックします。この薬剤は作用が非常に強いため、他の薬剤を使用しても痛みが軽減しない時に使います。
坐骨神経痛では、主に以下のような薬剤が使用されます。それぞれの特徴は次の通りです。
非ステロイド系消炎鎮痛剤の代表的薬剤ですが、発痛物質であるプロスタグランジンの産生を抑える作用があり、全身の様々な痛みに対して広く使われています。
鎮痛効果は強く、坐骨神経痛による痛みに効くこともありますが、ピリピリとした痺れを伴う痛みには効果がないことも多々あります。胃腸障害などの副作用もあるため、効果がない場合には漫然と服用を続けるのは避けましょう。
神経に由来する痛みに対して広く使用される薬剤ですが、神経に痛みを伝える神経伝達物質の放出を抑える作用があります。坐骨神経痛の痛みだけでなく、しびれなどの症状への改善効果も期待できます。
しかし、効果には個人差があり、めまいやふらつきなどの副作用も生じやすいため、高齢者には慎重な投与が必要です。
重症な坐骨神経痛では、トラムセット®のような麻薬性の鎮痛剤が使用されることもあります。脊髄や脳に存在する痛みの受容体をブロックすることで、強力な鎮痛効果を発揮します。坐骨神経痛の痛みやしびれなどの症状に対しても非常に有用とされています。
しかし、吐き気や便秘、眠気などの症状が強く、日常生活に支障を来たすケースも多々ありますので最終手段で用いられる薬剤と考えてよいでしょう。
坐骨神経痛の治療では、痛み止めとともに鎮痛補助薬を併用することがあります。鎮痛補助薬は、その薬自体に痛み止めの作用はないものの、服用すると痛みが軽くなる作用を持っています。
たとえば、抗うつ薬は痛みを感じにくくする経路を活性化することで鎮痛効果をあらわします。また、抗てんかん薬も神経細胞の過剰な興奮を抑制して痛みを軽くします。
このほか、血流をよくして痛みを軽減させる血管拡張薬や、筋肉の緊張をとる作用のある筋緊張弛緩薬が使われることがあります。そして、抗不整脈薬にも神経の興奮を抑制して痛みを軽くする効果があるため、坐骨神経痛の治療で使われることがあります。
漢方医学の場合、坐骨神経痛の痛みそのものに着目するのではなく、痛みの元になっている原因を取り除くという方針で治療が進められます。具体的には、痛みの原因となっている冷えや湿気などを体から出すようにしつつ、体を温めながら気(目には見えないけれど、体を支える原動力のようなもの)や血(全身の組織に栄養を与えるもの)のめぐりを良くして神経痛を改善していきます。
坐骨神経痛の痛みをとる目的で使用される漢方薬には、冷えている部分を温め、湿っている部分の水分を取り除く作用のあるものが使われます。さらに気の巡りをよくする生薬や、血の巡りをよくする生薬も配合されていると、全身にアプローチして慢性的な痛みをじっくり治していく働きも期待できます。
坐骨神経痛の痛みを抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛薬をはじめとする治療薬や、鎮痛補助薬と呼ばれる薬を処方されることがあります。
痛みがおさまらないからといって指示された用量以上の薬を服用してしまうと、かえって体に悪影響が及ぶこともあります。必ず指示通りに服用するとともに、期待する効果が得られないときは医師に相談してみましょう。